かに座
野人になっていく
小さな生まれ変わり
今週のかに座は、『もののけ姫』に出てきた「ジバシリ(地走り)」のごとし。あるいは、文明人にはあるまじき野生のうめき声を、みずからの内に見出していくような星回り。
『もののけ姫』の劇中で、イノシシの生皮をかぶって常人とは思えない動きで乙事主という巨大なイノシシの神を欺いていたり、離れたところから観察していたジバシリは、ジブリの創作ではありますが、おそらく狩猟を生業にしていた山の民をモチーフにしたもの。
山や森のように、木々が密集し何が潜んでいるか分からない深い森や、岩が隆起して足元が不安定で即座に方向感覚が狂わされてしまうような場所は、常人では近づくことすら困難です。
ましてや舞台は古代から存在する神々が住まうと言われる場所ですから、敵方でも地味な印象ではありましたが、ジバシリは欠かせない存在だったはず。
今日ではすっかり姿を消してしまいましたが、その起源はきわめて古く、日本だけに限らず時代を問わず世界中に存在した普遍的な「野人」の系譜にあたる存在と言えるでしょう。
つまり、いくら文明人のふりをしようとも、化けの皮をはがせば、そこには紛れもなき野人の相が今もなお深く刻み込まれているということ。
かに座の守護星である月が、うお座での下弦の月からふたご座への新月へ向けて動いていく今週は、ある種の“生まれ変わり”を遂げていきやすいタイミングと言えますが、その中で心の奥底でうごめくジバシリたちの足音が、だんだんとこちらへ近づいてくるのが感じられるかもしれません。
タガを外すためのひと手間
例えば、同じ温泉に入るのでも、人でいっぱいの時間帯に遠慮や気恥ずかしさを抱えながら湯につかるのと、人気のない早朝などに誰に遠慮することなく思いきりからだを伸ばし、心も一緒に解放していくのとでは全く異なるように。
今週のあなたは、自らのタガを外していく上で、きちんと工夫を凝らし、手間をかけていく必要に迫られていくでしょう。
何をする上でも様々な条件や制約がつきまとい、自分でも気付かないうちに人としての本能を萎縮させられてしまう現代社会において、「シンプルに生きる」ということは想像以上に困難なトライアルなのです。
湯船につかって、体中に染みこんだ不機嫌、苛立ちを溶かして洗い流し、子供のような本能を取り戻していく時間を、必ずどこかで作ってみて下さい。
今週のキーワード
本能を丸出しにする