かに座
ゼロから自分を練り上げる
「しみる」感覚
今週のかに座は、「青天の真昼にひとり出(いづ)る哉」(小林一茶)という句のごとし。あるいは、自分自身が変わっていく、まさにその瞬間を切り出していくような星回り。
掲句は、作者が40歳の時に詠まれたもの。
前々年に唯一の肉親であった父親も亡くなり、自分も既に若くはない。若い修業時代であれば、哀愁も気負いではね返したり、不幸に直面しても理屈をつける余裕もあったが、もはや深刻さを口に出せない程度の矜持やこだわりを持っていたのかもしれない。
その分だけ、感性ばかりがいたずらに冴えていったのでしょう。掲句もまた、空が身にしみ、ひとりあるという現実が果てしなく心に広がっていくようです。
一茶という人は、年を経るごとに季語や歳時などの俳句の約束事にこだわらなくなっていきましたが、掲句も季節感の定かではない句で、ただただ「青天の真昼」だけが圧倒的に自分に迫ってきたのでしょう。
将来、どうなるかわからない。けれど、どこまでも広がっていくほどのいい天気を前にしていると、ええじゃないか、という気もしてくる。そういうプラス・マイナス両極のすごいエネルギーをそっくりそのまま俳句として切り出しているようにも感じられます。
今週のあなたもまた、そんな一茶のように、矛盾する両者を同時に湛えたギリギリのところで自分を練り上げていきたいところ。
内なる声に集中していく
とはいえ、空に向かって暗い口をぽっかりあけ、自らの存在を示すどんな信号も発することなく、沈黙したまま時の経過に身を委ねていると、なんだか自分が大地の裂け目や、海水が出入りするだけの洞窟になったような気さえしてくる。
けれど、内なる声というのはそういう“感じ”になった際に、いちばんよく聞こえてくるものです。
よく見られたいとか、義理を欠かさないとか、そういうことを一所懸命やっていると、人生つまんなくなってしまうよ、とか。例えばそんな内なる声が聞こえてきそうな、いかにもな状況へと身を引いていくこと。
そうした声を通して、今週いかにばらばらになりかけている自分をひとつひとつ拾い集め、練り上げていけるかどうかで、今後のよしあしも決まってくるように思います。
今週のキーワード
内なる矛盾をそのままにしておくこと