かに座
目の覚めるような内的真実
「他に言いようがない」という感覚
今週のかに座は「寒暁や神の一撃もて明くる」(和田悟朗)という句のごとし。あるいは、稲妻のごとき「本音」に貫かれていくような星回り。
1995年1月17日明け方、作者は神戸の自宅で阪神淡路大震災に遭い、本人こそ無事だったものの、家は全壊。その後、奈良に居を移しました。
何事もなかったならば、彼は居を移すこともなかった訳ですが、人生には、意志の力の及ぶ領域をはるかに超えた、あまりの訳の分からなさに大いに翻弄されてしまう時というのが確かにあるのです。
作者はそれを「神の一撃」と表しましたが、自然の側からすれば別に一撃を加えようとした訳でもなんでもなくて、ただ単にその素顔をチラとこちらに見せてくれただけでしょう。
ただ、俳人であると同時に科学者であり、大学人でもあった作者をして、「神の一撃」と書く他なかった‟何か”がそこにはあったのだろうと思います。
そして、「本音」というのはそういう風にして言葉にされるものなのだろうな、とも。
今週のあなたにおいても、身近な自然を前にひょいと本音が口からついて出てしまうことがあるかもしれません。
でも、そうした体験を言葉で誰かに伝えていくことができるのはこの星では人間だけ。しかと口にしていきましょう。
上手に息を引かれていくこと
なぜ生まれる? なぜ育つ? なぜ生きる? なぜ死ぬ?
どれもいまだに分かりません。分かっているのは、生きているものはいつか必ず死ぬということだけ。しかし、自分だけは死ぬはずがないと思っている内は思い出さないでしょう。
その意味で、本音を吐くということは、言い換えれば、死の向こう側の空気をすこし深く腹に入れていくということと表裏の関係にあるのではないでしょうか。
「自分は絶対に死ぬ」というところから出発すること。それこそが、嘘偽りない本音を掃いていくための唯一の作法なのだと思います。
今週のキーワード
生きた証しとしての本音