かに座
倫理的想像力
小さな倫理学
今週のかに座は、「痩蛙まけるな一茶是ニ有」(小林一茶)という句のごとし。あるいは、小さきものへのまなざしから、己が依拠する倫理を築いていくような星回り。
有名な句ですが、いささか真面目すぎる受けとられ方をされていることが多くあります。
「痩蛙(やせがえる)」への過度な思いやりを一茶の不遇な成長期と直接重ねているものと直接推測したり、そういう一茶だからこそ持ち得た弱者憐憫の意識の現れを見たり、痛めつけられた人間の逆襲への意欲を読みとってみたり、なかなか大変です。
単に、普通なら意識の端で気にも留めないような、小さきものへ呼びかけていく感性のおもしろさを楽しめばよくて、その裏を取ろうとし過ぎるとかえって句がつまらなくなる。
特に「一茶是ニ有」なんて言い方は、軍記ものにでてくる名乗り調子で、どうもこれが面白くって句を作っている節さえある。
ただ倫理や道徳なんてものは説教臭くなってしまった瞬間にその有効性を失いますから、それで全然かまわない。
今週のあなたもまた、ちょっとした日常の中に思わず呼びかけていきたくなるものを見出していくくらいのつもりがちょうどいいでしょう。
想像力が生きる道を開くとき
「自殺とは想像力の断絶のこと」だとすれば、今週のあなたは、自分、もしくは誰かを、ある種の自殺状態から救っていこうとしているのだと言えるかもしれません。
大げさに聞こえるかもしれませんが、「想像力の贈り物」というのは本来そこで織りなされたイリュージョンひとつで、人生を変えてしまうほどの力を秘めているものなのです。
あなたが何気なく身を置いている日常やその側に転がっている経験を贈り物へ変えて、そこにあなたなりの想像力を乗せて、こっそりと解き放っていきましょう。
贈り物に必要なのは、ごく普通の人間の素朴な心をもって、他者の願いに開かれてあること。
奇跡や驚異というものも、この世に存在している者同士の素朴な交流を通してはじめて成立するものなのだということを覚えておくべし。
今週のキーワード
R・シュタイナー『自由の哲学』第12章