かに座
儀式的労働観
作務を尊ぶ
今週のかに座は、禅修行における作務のごとし。あるいは、実績にもお金にも成長にも繋がらないような仕事によって、清浄身をつくっていくような星回り。
「作務」とは掃除や草引きなどの労務であり、境内や道場などの修行の場を整えるための毎日の環境整備であり美化活動のこと。
当然、多くの人に注目されるような仕事でもなければ、やってお金になる訳でもなし。およそ、キャリアアップやワクワク感などとも縁の遠い肉体労働です。
自分はそんなブルーワーカーみたいなことはしたくないと思う人がいるかもしれませんが、禅修行ではこうした作務を非常に重視し、高齢になった老師が決して作務を辞めようせず、「一日不作一日不食(一日なさざれば一日くらわず)」といった言葉を残した例も事欠きません。
これは仕事観の違いというよりも、自分自身をどういう存在として捉えているかでしょう。
つまり、煩悩や過剰さに囚われやすい自分であると実感していればこそ、作務のような自分を空っぽにする作業の大切さが身に沁みてくるのであって、逆に何かを獲得したり、人から承認されたりしなければ自分には何もないと考えている人ほど、こうした作務を嫌がる傾向にあるように思います。
あなたはどちらに近いでしょうか?
アイヌにおける奉仕の捉え方
アイヌでは、熊の姿を借りて人間の世界に交易にやってきたカムイ(神)を一定期間(1~3年程度)大切にもてなした後、盛大な見送りの宴を行って神々の世界にお帰り頂く宗教儀礼「イオマンテ(熊祭り)」がとても大切にされていました。
熊は肉や毛皮などの置き土産を残し、人々は神々の世界では手に入らない酒や団子や供物を捧げることで、やがてカムイが神々の世界に帰った後、その素晴らしさをほかの神々にも伝えてもらい、再度やはり肉や毛皮とともに人間界を訪れる熊を歓待する。
こうして、彼らは狩猟を通じて自分たちはより豊かになっていくと信じたのです。
中長期的なスパンで見たとき、今あなたは、自分の生活をまさにこうしたある種の「儀式」へと昇華していくことが求められ始めているように思います。
生きていく上で必要な資源を見定めつつ、循環していく世界の中で豊かに暮らしていくためには、自分はいったいどんな犠牲を払えばいいのか。
今週は、ぜひそうした世界の循環や長続きする豊かさという観点から、自身の仕事を捉えなおしてみてください。
今週のキーワード
叙事詩としての労働