おひつじ座
抱卵の季節
吟行の果てに
今週のおひつじ座は、『鷲の巣と見えて大きな卵かな』(正岡子規)という句のごとし。あるいは、身を投げうってでもあたためたいと思える可能性を追求していくような星回り。
春はさまざまな鳥がそれぞれにふさわしい場所に巣をつくりますが、「鷲の巣と見えて」とあるのでこれは樹の上にある巣。それをさらに高い場所から眺めて、あれは鷲の巣かなあ。なるほど、卵も大きくて、立派だもんなぁ、などと言っていたのかも知れません。
住宅街でも、川が流れていると近くの雑木林の上などに白鷺(しらさぎ)が巣を作っているのを見かけますが、鷲となると断崖のうえだったり、かなり高い樹上だったりと、そもそも人里からかなり離れたところであり、見つけるのも難しいはず。おそらく、この発見も日常の合間でたまたま起きたのではなく、吟行など、自然の豊かな場所で自然を再発見する行為に意図的に打って出た中での“収穫”なのでしょう。
春は「抱卵」の季節であり、それは人間においても同じ。すなわち、過去の延長線上をただたどっていくだけでなく、そこに新たな要素を加えるべく、その可能性をあたため、育て始めるには、格好のタイミングでもあります。
その意味で、4月21日におひつじ座から数えて「生きがい」を意味する2番目のおうし座で木星と天王星の合(新機軸の打出し)を迎えていく今週は、自分が心から新たに勝ち得たいと思えるものが見つかっていきやすいはず。
「俳句の理想は俳句の滅亡である」
この言葉は、明治44年(1911)に雑誌に寄稿された種田山頭火の『夜長ノート』からの一節。大正期に五七五や季語にとらわれない自由律俳句の旗手として脚光を浴びた山頭火が、他の自由律俳句に撃ち込んだ同時代の俳人と一線を画していたのは、こうした自身の文学理念を流浪の托鉢生活を通して実践した点でした。
仏教に「捨身(しゃしん)」という言葉がありますが、実際に仏門に入った彼を支配していたのはそうした「捨て身」の精神であり、どこで野垂れ死にしようが頓着しないという風狂の美学であり、彼に妻子があったことを思うとその徹底ぶりは尋常でなかったことが少しは伺われるはず。
つまり、室町時代の怪僧・一休を思わせるそうした時代を超えた風狂性と、伝統に反旗を翻すモダンなアヴァンギャルド精神の稀有な融合こそが、山頭火の真骨頂だったのです。
今週のおひつじ座もまた、自身がいのちを懸けてでも体現したい理想やビジョン(大きな卵)を改めて見出していくことがテーマとなっていくでしょう。
おひつじ座の今週のキーワード
内なるエロスを育てる