おひつじ座
会話ゲームの再構築
きちんと考えないと感情も誤る
今週のおひつじ座は、「真犯人はお前だ!」と感情でなく思考を指さす名探偵のごとし。あるいは、「ちゃんと考えること」の効能にあらためて思い至っていくような星回り。
現代社会では、「あの人はすぐ感情的になる」といった非難が大手を振るってまかり通るくらい感情は悪者扱いされがちですが、一方で昨今進化が目まぐるしいAIと人間との比較について言及する際に、貴重な「人間らしさ」の源ともされています。
いずれにせよ、そこでは感情というものが、思考とはまったく無関係な代物であり、かつ私たちを振り回すものとして捉えられています。しかし、こうした認識は果たして妥当なのでしょうか?
例えば、感情を代表するものとして「怒り」について考えてみると、これは自分に不当な危害が加えられているという状況認識(激しい恥辱感や敵意への気付きなど)と、それに対処するための反撃行動(眉間にシワを寄せるといった身体動作など)という2つの役割によって構成されていますが、だとすると「藪をつついて蛇を出す」という故事のように状況認識を誤ることで、余計な反撃が引き起こされ結果的に「間違った怒り」になることは頻繁に起こりえることが分かります。
こうした「間違った怒り」の原因は、いわば“早とちり”にあると言えますが、とはいえ先の2つの役割は必ずしも自動的に連続する訳ではなく、もう少し聞き耳を立てるとか、ダブルチェックをするなど、きちんと時間や労力をかければ間違いは防げるはず。そして、そうした手間をかける必要性は学習によって認識され、そこでは思考が鍵になる。つまり、何が危害であり、何が危害でないのかを考えたり、見極めたりする努力を怠ることこそが間違った怒りを生んでしまうのであり、その意味で、感情は思考によって形作られており、きちんとした思考の積み重ねがないからこそ、感情も間違うのではないでしょうか。
7月18日におひつじ座から数えて「心的基盤」を意味する4番目のかに座で新月を迎えていく今週のあなたもまた、私たちは感情に振り回されているのではなく、むしろ感情の方が私たち(思考)に振り回されているのだ、という前提に立って過ごしてみるべし。
「カード・ダイアローグ」というメソッド
もちろん「ちゃんと考える」ためにはそれなりの創意工夫やその積み重ねが求められます。例えば、フラットな対話の場を作っていくために2017年にサトウアヤコさんが考案・公開した「カード・ダイアローグ」をご存じでしょうか。
使い方はいたってシンプルで、対話のテーマを提示する「トピックカード」に対して、「引用カード(他者の言葉)」と「考えカード(自分の言葉)」を使い、順番にカードを出して話をしていくのですが(4人程度の少人数を想定)、そうして生まれる「書く⇒話す⇒聴く」という流れを繰り返すことによってコミュ力が高く声の大きい特定の人間に引っ張られたり流されることなく、フラットに議論していくことができるのだそうです。
また、他者の言った言葉や本のテキストを書く「引用カード」と自分の思ったことを書く「考えカード」を同じサイズにすることで、自他の考えを分けつつもそれらを等価値に扱えるようにしておくことで、誰が言ったかではなく、議論そのものに集中できるのも特色。
さらに、各カードには書き込んだ時間も記録できるため、さながら楽譜のように後から議論を時間軸に沿って再現することもできるなど、会話の可能性を広げてくれる工夫と創意がちりばめられているのです。
今週のおひつじ座もまた、会話であれデートであれ睦み事であれ、自分が感情的になりがちな場面にある時ほど、まるではじめてそれを行うかのように、新鮮な気持ちと新たな創意工夫とともに臨んでみるといいでしょう。
おひつじ座の今週のキーワード
「書く⇒話す⇒聴く」という流れを繰り返す