おひつじ座
交感は垣根を超えて
春は平等に訪れる
今週のおひつじ座は、『春来る尾の有るものに無いものに』(鈴木牛後)という句のごとし。あるいは、自分がどこの誰と対等に並んでいるのかを直感していくような星回り。
考えてみれば、牛も猫も、それどころか鳥も魚も虫ですら、みな尾を持っている。とすると、地上の主だった登場人物の中で「尾が無いもの」は、ほとんど人間だけなんじゃないかと、そんな風にさえ思えてくる。
そう、尾の有る無しで考えれば、人間というのは地球上では圧倒的に少数派なのだ。しかし当の人間の方では、尾など無いのが当たり前で、むしろそれが偉いと思い込んでいる。これはとんでもない話だ。
作者はおそらく、そういう人間の思い上がりにちらりと目配せしつつも、あえて「尾の有るもの」を先に呼んだうえで、そのどちらにも春は平等に訪れるのだと詠んでみせたのではないだろうか。少なくとも「尾の無いもの」のひとりとして、自分は「尾の有るもの」の隣りにいるのだと深く感じていたがゆえに。
4月6日におひつじ座から数えて「横に並ぶもの」を意味する7番目のてんびん座で満月を迎えていく今週のあなたもまた、自分は誰とともに春を謳歌したいのか、誰と一緒なら春を謳歌できるのか、改めて胸に問うてみるといいだろう。
交感(ボードレール)
自然は神の宮にして、生ある柱(はしら)
時をりに 捉へがたなき言葉を洩らす。
人、象徴の森を経て 此処を過ぎ行き、
森、なつかしき眼相(まなざし)に 人を眺む。
長き反響(こだま)の 遠方(をちかた=向こうの方)に混じらふに似て、
奥深き 暗き ひとつの統一の
夜のごと光明のごと 広大無辺の中に
馨と 色と 物の音(ね)と かたみに答ふ。
(中略)
無限(はてなし)のものの姿にひろがりて、
龍涎(りゅうぜん)、麝香(じゃこう)、安息香、焼香のごと、
精神(こころ)と官覚(にく)の法悦を歌へる、薫(かをり)。
こうして「交感」をしていると、その対象が月であれ牛であれ桜の樹であれ、なんだかただのモノや自然ではなくなってくる時があるのです。今週のおひつじ座もまた、そんな風に種の垣根を超えていく瞬間を存分に味わっていくことがテーマとなっていくでしょう。
おひつじ座の今週のキーワード
精神と官覚の法悦