おひつじ座
ノイズの中にこそチャンスはあるということ
弱いリアルがあってこそ
今週のおひつじ座は、『さくら、ひら つながりのよわいぼくたち』(福田若之)という句のごとし。あるいは、ノイズを求めて現実に触れていこうとするような星回り。
上下で話しぶりの違うことで切れていながら、どこかでかすかにつながっている。そういう俳句らしさを、口語を交えた新しい形のなかで発明しようとしている一句とも言えます。
人生の充実のためには強いつながりと弱いつながりの両方が大切ですが、ともすると私たちは、家族や職場、ネットの人間関係など、いま自分が生きているリアルを深めていくような「強いつながり」にばかりを目で追いがちで、そうして環境のなかにどんどん取り込まれていく傾向にあるのではないでしょうか。
しかし一方で、さくらの花びらが目の前でひらりと落ちて、それを目で追うほんの一瞬のあいだに視線がまじわっただけで、何かがすっかり変わってしまって、運命がわかれていくのも人生であり、そういう非合理性こそが人生を突き動かすダイナミズムになっていたりもするはず。
めんどうだったり、恥ずかしかったり、意味が分からなかったり。「弱いつながり」というのは、実にノイズまみれな訳ですが、だからこそ硬直しがちな現実に「切れ」をもたらすことができる。つまり、ノイズのなかにはチャンスが潜んでいて、そういうものに出会っていくなかで、私たちはちょっとずつ、時に決定的に、変わっていくのです。
29日におひつじ座から数えて「ひとつの区切り」を意味する4番目のかに座で上弦の月を迎えていく今週のあなたもまた、そうした「弱いつながり」をおのずと求めていくことになるでしょう。
ちっとばかし愛するってのを
詩・小説・戯曲・短編・コラムなどに活動した20世紀アメリカの作家ラングストン・ヒューズは、それまで白人作家によってばかり語られてきた中で、ようやく黒人自身の視点から普遍的な人間像を提示することに成功した稀有な人物でもありました。
彼はアフリカ系のみならず、ユダヤ系やネイティブ・アメリカンなどが混血した一家から生まれ、幼少期に両親が離婚しており、祖母から黒人の伝統口承文学を多く聴かされ育てられたのだと言います。そうした幼少期の経験は彼の作品にも色濃く反映されていますが、ここでは「助言」という詩を引用しておきたいと思います。
みんな、云っとくがな、
生れるってな、つらいし
死ぬってな、みすぼらしいよ――
んだから、掴まえろよ
ちっとばかし 愛するってのを
その間にな。
(木島始・訳)
実際彼はたくさんの苦しみを経たのでしょう。それらは言わば強いつながりの産物だった訳ですが、だからこそ、ヒューズは一方で弱いつながりの産物としてこうした詩を紡げたのかも知れません。今週のおひつじ座もまた、そんなヒューズのように、「ちっとばかし」の間に訪れるノイズやきらめきを追いかけていきたいところです。
おひつじ座の今週のキーワード
愛の呼吸