おひつじ座
ABCから始めよう
摂取から再合成までの過程
今週のおひつじ座は、コラーゲンのばらばらのアミノ酸への分解作業のごとし。あるいは、古い物語から抜け出していくために必要な工程を踏んでいくような星回り。
分子生物学者の福岡伸一が肌の張りをよくする「コラーゲン」の摂取をめぐって、次のような面白いことを言っています。
体内に入ったアミノ酸は血流に乗って全身の細胞に運ばれる。そして細胞内に取り込まれて新たなタンパク質に再合成され、新たな情報=意味をつむぎだす。つまり生命活動とは、アミノ酸というアルファベットによる不断のアナグラム=並べ替えであるといってもよい。(『動的平衡』)
福岡によれば、コラーゲンを食べ物として外部からたくさん摂取すれば肌の張りはよくなるのかというといえば「端的に否」であり、なぜなら「食品として摂取されたコラーゲンは消化管内で消化酵素の働きにより、ばらばらのアミノ酸に消化され吸収される」からであり、それが「血液に乗って全身に散らばって」「新しいタンパク質に再合成され」るからなのだと。
このコラーゲンをいまの日本社会に流通している文脈、感じ方、考え方すなわち「常識」に、そしてばらばらにされたアミノ酸を「言葉」に置き換え、さらに再合成されたタンパク質を実際にあなたが生きていく「物語」だとしてみると、今のおひつじ座の人たちの状況におのずと合致していくのではないでしょうか。
11月30日におひつじ座から数えて「廃棄と再生」を意味する12番目のうお座で上弦の月を迎えていく今週のあなたもまた、新しい物語を構成する「常識」の要素をいったん無色の「言葉」の単位までしっかりと分解していきたいところです。
忘却は意志のはじまり
前触れなく記憶の一部が消えてしまう健忘。時にはそれに、つまづくことの多い私たちの人生の道行きが大いに助けられることがあります。
未来は何かを「意志する」ことで始まっていくのだと、私たちはどこかで固く信じているところがありますが、それは裏を返せば過ぎ去った過去に背を向け、ただ未来だけをまなざし、これまでの一切から切り離された始まりであろうとすることでもあり、過去を不自然な形で「忘却したことにする」ことに他ならないのだとも言えます。
その意味で、何かを健忘してしまうということは、ごく自然なかたちで、意志による始まりのきっかけとなる訳ですが、もしかしたら意志の働きなんてものは現代人が信じているように何でもそれによって克服できる万能の力などではなく、むしろ忘却からしか発動し得ないある種の幻想なのかも知れません。
今週のおひつじ座もまた、ある意味での忘却期間として、色んなことをすっかり忘れて、半径数メートルくらいの<いまここ>からやり直してみるくらいのつもりで過ごしてみるといいでしょう。
おひつじ座の今週のキーワード
意志教からの脱退