おひつじ座
人間賛歌
洗練より荒削りでいこう
今週のおひつじ座は、絶滅危惧種としての秘宝館のごとし。愛すべき鈍感さを発揮していこうとするような星回り。
これほどまでにアダルトコンテンツがネットで見られるようになり、性の実態を垣間見るためのハードルが低くなった今の時代にあっては、観光スポット脇に建っている秘宝館はもはやビニ本や日活ロマンポルノなどの昭和の遺物らと同列の意味しか持たないはず。
禁欲的なものの対極に位置するものとして建てられた秘宝館の内部では、江戸時代の春画や民俗学的な性風俗の資料の“現物”などが雑然と並べられており、さながら性にまつわる陳腐なジョークをそのまま具現化したかのような光景が今現在も広がっているもの。
そこには今さら驚異も神秘もない代わりに、人間誰しも性の前では悪趣味であっても猥雑であっても安っぽくてもいいじゃないか、というどこか論理が破綻したキッチュな人間賛歌が鳴り響いており、洗練とは程遠いながらも、よき時代の愛すべき鈍感さに浸っていくことができます。
その意味で、16日におひつじ座から数えて「自分勝手な解釈」を意味する5番目のしし座で下弦の月を迎えていく今週のあなたもまた、どうしたって世間から浮いてしまう奇人や変人としての自分をどこか高いところから眺めるつもりで過ごしてみるといいでしょう。
隠された生命力の源泉
田口ランディの短編集『蛇と月と蛙』の一つに、ある女性がたまたま子どもの頃に見た蛇の交尾を思い出して、次のように語るシーンが出てきます。
お正月に神社にお参りに行くでしょう。そうすると“しめ縄”が張ってありますよね。あのしめ縄がね、そっくりなんです。交尾していた蛇の姿に。もう、うり二つ。だから、しめ縄を見ると、どうしても蛇の交尾に見えてしまうんです。学術的なことはわからないけど、しめ縄のルーツは蛇なんじゃないでしょうか。(中略)あの姿はほんとうに異様だった。異様なんだけど、なんていうか、すごく切実な感じで、胸苦しいほどだった。
そして、女性の言葉は著者の考えを代弁するかのように、こう続くのです。
生き物は、淫らで、けなげだなあと思いました。でもきっと、神様の目から見たら、人間も同じように淫らでけなげな、生き物のひとつかもしれないですね
今週のおひつじ座もまた、自身の奥底に眠るエネルギーの巨大さに改めて気付いたり、掘り起こしていくことがテーマとなっていくでしょう。
おひつじ座の今週のキーワード
秘宝館的想像力