おひつじ座
あふれ出る生命実感
ザボンザボンザボン
今週のおひつじ座は、『ザボンザボンザボンは海から生まれたの』(作者不詳)という句のごとし。あるいは、何も考えずにただ突進していこうとするような星回り。
俳句のよさは何よりまず「短いこと」、そしてテーマが「自然×人間の生き様、生活」であることにあります。つまり、どんなテーマでもいいし、誰でも書けるということ。
実際、俳句は神様がどうの、哲学や道徳がどうのなんて難しいことはどうでもよくて、どんな職業であれ、何歳であれみな平等で、ただ自然のなかで感じとった生きた経験をそのまま詠えばいい。うまい下手というのは二の次で、かえって下手な小細工に走らない子どもの方がいい詩を書いてたりもする訳ですが、掲句もまた、おそらく小学生低学年くらいの子どもが詠んだもの。
「海」と聞くと「水着」「駐車場の混雑」「誰とどんなていで行くか」など、大人になるほど反射的にその面倒な部分ばかりが思い浮かんでしまう一方で、ここでは五七五を思いきりはみ出した擬音語の3連続から始まり、まるで自分に言い聞かせるかのような「海から生まれたの」という結びで終わっています。
きわめて直感的に、自分を含めた地上のあらゆる生命は、もともと「海から生まれた」存在であることを感じとり、そして海に向かって何も考えず突進していくときに聞こえてくる音を通して、自分が生命体であることを実感しているのでしょう。
6月21日におひつじ座から数えて「自分を支えてくれるもの」を意味する4番目のかに座に太陽が入る夏至を迎えていく今週のあなたもまた、そうした生々しいの命のリズムに立ち返って、余計なものを全身から振るい落してみるといいでしょう。
滔々と流れ続けてきたもの
例えば、ウサギやカエルやサルなど、さまざまな動物たちが遊んだり喧嘩したり狩りをしたり法要したりしている姿を描いた『鳥獣戯画』は、漫画のルーツと言ってもいい傑作ですが、その成立は800年以上前の平安時代末期。
当時の貴族たちが詩歌で恋愛を表現しているあいだも、庶民たちは狩りを行い、空想や文学の世界の抽象的なモチーフとしてではなく、自分たちのすぐそばにいる身近な存在として動物たちを生々しく感じていました。『鳥獣戯画』というのは、いわばそれまで雅な世界では表現される機会を持たず伏在していた庶民たちの生活感覚や、そこで大事にされてきたものが大噴出した作品だった訳です。
今週のおひつじ座もまた、あなたの中で滔々と途切れることなく流れ続けてきた生々しい実感を何らかの表現や機会を通じて解き放っていくことができるはず。
おひつじ座の今週のキーワード
潜在的実感の噴出