おひつじ座
失われたイニシエーションを求めて
混沌の最中で
今週のおひつじ座は、“周辺”の女神としてのアルテミスの顕現のごとし。あるいは、野性の生活と文明の生活とを改めて結び直していこうとするような星回り。
ギリシャ神話において、太陽神アポロンの妹であるアルテミスは、森をかけめぐり野獣に死をもたらす狩猟の女神であると同時に、踊りと歌の喜びの中に永遠の処女性に身を捧げた清純なる処女神であるという、二重の様相を帯びています。
ここで大事なのは、アルテミスという神はつねに2つの相反する世界の境目にあって、それぞれの境界線を指し示しているという点です。すなわち、アルテミスが行動するのは野蛮と文明のあいだに必要な通路を設けると同時に、規律も正義も知らない純然たる暴力や混沌の最中にあるまさにその時にこそ、人間がそれを発見できるようにするためなのです。
例えば、アルテミスは処女の神として恋の接触をすべて斥ける一方で出産の神でもあります。それは、出産というものが若い娘たちのうら若き乙女としての人生の一時期の終わりであると同時に新生児や母としての彼女たちにとってはその歩みの始まりであり、また、結婚という社会的制度のなかに、出産や分娩が人間の野性的動物的一面をはさみ込むということでもあるからです。
文明から野性へ、そして野蛮から秩序への移行やプロセスをつかさどり、あらゆる“周辺”に潜んでいるアルテミスは、両者のはざまで境界が揺らぎ、不安が極度に高まったときにこそ、人間が両者の境界を乗り越え可能なものとするよう取り計らいつつも、その境界線が厳然たるものであることを示すために、私たちの前に現われるのです。
14日におひつじ座から数えて「エッジ」を意味する9番目のいて座で満月を迎えていく今週のあなたもまた、混乱や混沌の最中において守るべき規範を思い出したり、通り抜けるべき獣道をたまたま見出したりといったことが起きていきやすいでしょう。
ニュクスの子供たち
ユダヤの伝承に出てくる女性の悪霊リリスは、ギリシャ神話では夜の女神ニュクスと呼ばれていました。彼女は「従者をひきつれて、夜の最も闇の濃い時間にうろつき回」り、夜通しぐっすり眠っていられる子どもや若者のうちは遭遇しないものの、次第に老いとともに対面を余儀なくされていく訳です。
そしてこの女神にはたくさんの子どもたちがおり、死の運命(モロス)、皮肉(モモス)、復讐(ネメシス)、怒り(エリニュス)、悲嘆(オイジス)、色欲(クプリス)という名でそれぞれが昼間は私たちの中でなりを潜めている心理学上の概念を象徴しており、これらは逆に夜の闇の中でそっとこちらに働きかけてくるのです。
彼らは夜中にいったん目を覚ました者を、再び安らかには眠らせてくれないでしょう。そうして不安を抱えた心は、さまざまな思いに苛まれますが、今週のおひつじ座が留意すべきは、そんな風にして眠れないままベッドに横たわる時間の中でしか育たない類の気付きがあり、それこそがアルテミスの働きかけでもあるのだということ。
きっとニュクスは、私たちに自分たちのことをもっとよく知ってもらおうとしているのでしょう。今週は、あなたの中に眠っていた夜の化身がいつも以上にうごめき騒いでいくはず。その際、できるだけ淡々と相対してみるといいでしょう。
おひつじ座の今週のキーワード
夜目を利かせる