おひつじ座
ますます自分を揺るがしていく
ボコっと外側に出てくるもの
今週のおひつじ座は、『べてるの家』の当事者研究のごとし。あるいは、自分がまた違う何かになって、自分像が複雑化していくような星回り。
北海道浦河町にある精神障害等をかかえた当事者の地域活動拠点である『べてるの家』では、統合失調症などの症状をもつ人が自らの病気や苦労をホワイトボード等に書き出して、その症状にユニークな名前をつけたりしながら、周りの人たちと自身の置かれている状況を一緒に眺めたり、面白がったりして、共有しあう「当事者研究」と呼ばれる取り組みがなされてきました。
そうやって自身の生きづらさや困難と上手に付き合っていく環境を、当事者とまわりの人たちとで協力しあいながら作っていく訳ですが、その過程で本人の内側にある人間観のようなものがボコっと外側に出てくることがある。
もちろんそれは、ただ何もないところから作り出されるというより、共に生きてきた家族や地域、時代などの背景や、生活のなかに何気なくあったモノや言葉、出逢ってきた人間や自然、取り組んできた営みなどが積み重なった、より深い部分から出てくるもので、そういうトータルな自己表現がまわりに共有されていくことによって、自分の存在を肯定できるようになったり、どんどん癒されていったりと、自分自身との向き合い方も変わっていくんですね。
30日におひつじ座から数えて「生きた交流」を意味する3番目のふたご座で新月を迎えていく今週のあなたもまた、これまでの自分とは少し違う何者かになることで、自分自身や他者とのコミュニケーションが変わっていくのを実感していくことになるでしょう。
自己同一性の揺らぎ
中国の古典に荘子の『胡蝶の夢』という有名の話があります。曰く、むかし自分が蝶になった夢を見た荘周という男がおり、楽しく飛びまわる蝶になりきって、のびのびと快適にしていた。ところが、ふと目が覚めてみると、まぎれもなく荘周である。いったい荘周が蝶となった夢を見たのか、それとも蝶が荘周になった夢を見ているのか。荘周と蝶とは、きっと区別があるだろう。こうした移行を「物化(万物の変化)」と名づけるのだ、と。
ここで注目したいのは、「俄然として覚むれば(ふと目が覚めてみると)」という、荘周と蝶という全く異なる次元への切り替わりの瞬間であり、次元の境い目をくぐる体験です。
そこでは2つの次元が互いに相対化しあっており、それは今ここに生きている「現実」が現実であることの自己同一性、安定性が揺るがされる体験に他ならず、それでいて、そうした意識の地殻変動に巻き込まれつつも、それを外側から傍観することが許されず、あくまで“内側”から体験するしかないのですが、これはどこか先の当事者研究とも通じるところがあるように思います。
その意味で、今週のおひつじ座にとって、わたしとわたし自身のあいだで起きる「物化」の感覚を思い出していくことがテーマになっていくのだとも言えます。
おひつじ座の今週のキーワード
自分が自分であるということの複雑化