おひつじ座
自尊心の置きどころ
冬薔薇のごとく
今週のおひつじ座は、「冬薔薇や賞与劣りし一詩人」(草間時彦)という句のごとし。あるいは、自分は社会的にどこへ行き着いていくのかを遠望していくような星回り。
この句を詠んだとき、作者は三十四歳。高校生の頃に胸を病み、退学したまま終戦を迎え、三十一歳にしてようやく製薬会社に職を見つけ、働き始めました。この句の前書きには、「勉めの身は」とありますから、職場での自身の働きぶりについて詠っているのでしょう。
「賞与劣りし」とあるので、周囲の同僚たちに比べて自分の評価が劣っているという実感が日ごろからあったのかも知れません。それがついに賞与の金額という動かしがたい事実として突きつけられ、作者は自尊心の置きどころを必死に確認しようとした結果、自分はサラリーマンではあるけれど、それがすべてではないという結論にいたった訳です。
自分はしょせん「一詩人」に過ぎないのだと謙遜こそしているものの、「冬薔薇」のつつましくも気高く、凛とした咲きぶりとの取り合わせから、作者にとって俳句や詩こそが自分の生きる証であり、誇りでもあるのだという静かな決意の深さが伝わってきます。作者はその後も25年にわたって自身の平凡なサラリーマン生活を俳句に詠み続けました。
同様に、2月1日におひつじ座から数えて「仕事を通じて得られる結果やその目的」を意味する11番目のみずがめ座で新月を迎えていく今週のあなたもまた、自身の自尊心の置きどころと、その決意のほどを改めて再確認させられていくことになりそうです。
自分を信じて橋をわたる
「綱渡りより世渡り」なんていう言葉もありますが、橋わたりの達人でもあった西行の歌に、こんなものがあります。
五月雨はゆくべき道のあてもなし 小笹が原もうきに流れて(『山家集』)
ここで西行は、あてなく流れる五月雨に、あてのない自分自身の旅路と、うき(浮き、憂き)世のはかなさを掛けているのでしょう。でも、それは自分で求めていったものでもあり、けっして悲嘆している訳ではありません。
むしろ、求めていった先で出会う矛盾や疑問、悲哀と夢、得体の知れないものの気配など、それら一つ一つを感じて動いた先こそが、「橋(端)」であり「境界線」であり、西行なりの自尊心の置きどころだったのではないでしょうか。
今週のおひつじ座もまた、それらのうちの一つでもあぶり出していくことを心がけていきたいところ。
おひつじ座の今週のキーワード
あぶない橋をこそわたる