おひつじ座
初心に返るべし
救助犬のいる光景
今週のおひつじ座は、「此巨犬(このおおいぬ)幾人雪に救ひけむ」(石島雉子郎)という句のごとし。すなわち、一度は見失ってしまったものを見つけ出していこうとするような星回り。
雪国などでは雪の下に埋まって行方が分からなくなった人を見つけ出すのに、よく犬を使ってきたそうですが、作者はそうした救助犬の1匹を見たのでしょう。
犬はその発達した嗅覚で、雪道を踏み迷ってしまった人はもちろん、雪の中に埋まっている人までも探し出すのだと聞いて、この目の前の大きな犬も、これまで幾人もの人間を雪の中から救い出してきたのだろうと、その姿に見とれてしまったのでしょう。
あるいは、人間の力では決して見つけることのできないものを救い出してくれる美しい獣を前にしたとき、自分がとうの昔に見失ってしまった何かもを、また再び見つけ出すことができるかも知れないという希望が、不意に灯ったのかも知れません。
19日におひつじ座から数えて「繋がり」を意味する3番目のふたご座で満月を迎えていくところから始まった今週のあなたもまた、繋がりの切れていた思いや相手と、改めて繋がりを結び直していくためのきっかけを掴んでいくことがテーマとなっていきそうです。
「初心」ということ
一度失ってしまうと、取り戻すのがとても難しいもののひとつに「初心」があります。そして、それは世阿弥が「初心忘るべからず」という言葉に込めた意味とも深く関連しているように思います。
というのも、この言葉における「初心」とは、普通に考えられているような「最初の志」のことではなく、自分が未熟であった頃の最初の試練や失敗のことなのです。
試練というのはいつも思わぬタイミングでやってくるものですが、実際にそうした状況に置かれたとき、自分を苦境から救い出してくれるのは、都合よく手を差し伸べてくれる師や恋人や友人などではなく、いつだって苦しんだ過去の自分に他ならない、と。そういうことを世阿弥は言っているのです。
もちろん、はじめから99%前向きな鉄の志を持てる人なんていませんし、そういう志は結局のところ最後まで続かないでしょう。逆に99%後ろ向きで当たり前な状況から、「49%後ろ向き51%前向き」なところまで持ち直した時に初めて、人は「初心」を取り戻していくことができるのかも知れません。今週のおひつじ座もやはり、初心に返るべし。他に必要な言葉はないように思います。
おひつじ座の今週のキーワード
ほつれた糸をつむぎ直す