おひつじ座
傷口と言葉
こちらは7月19日週の占いです。7月26日週の占いは諸事情により公開を遅らせていただきます。申し訳ございません。
象徴的痛みとしての「境界」体験
今週のおひつじ座は、「ディアスポラ」という言葉のごとし。あるいは、自身をひとつの境界(ボーダー)そのものと感じていくような星回り。
元来は「離散」ないし「離散地」を意味するギリシャ語で、2世紀のエルサレム陥落以降、世界の様々な地域に離散して暮らさざるを得なくなったユダヤ人の在り方を指す言葉です。
そしてその暮らしの中では異文化との融合、あるいは異文化への同化が、意識的・無意識的に進行していった訳ですが、近現代の植民地支配を典型とする文化的な支配・被支配の関係は、多くの人々に言語の習得の過程で社会的かつ暴力的な他者性を刻印し、そこでは言語による自己表現において恐ろしい屈折をはらんできました。
例えば、近代以降の日本でも英語教育が当たり前になされてきましたが、英文は読めても自国の数百年前の文献は読めないという日本人はとても多いでしょう。そういう意味では、日本人もまた知らず知らずのうちにディアスポラ的な屈折を抱え込んでしまっているのだと言えます。
24日におひつじ座から数えて「社会的存在」を意味する11番目のみずがめ座で満月を迎えていく今週のあなたもまた、自分が無意識のうちに慣れきってしまった断絶や受け入れてしまっている被支配的な構造について、改めて見直していきたいところです。
「なぁ、俺はあいつらベトコンたちに何の恨みもないんだよ」
1966年3月、報道陣に囲まれたモハメド・アリは自身が放ったこの一言をきっかけに、徴兵拒否とベトナム戦争への表立った反対表明のため、ヘビー級のチャンピオンベルトを剥奪され、ボクサーとしての全盛期を棒に振るだけでなく、その地位と何百万ドルものお金を失い、借金苦にまで追い込まれました。
徴兵を回避した罪で有罪判決を受けてからも、彼は法廷闘争のかたわら階級差別と人種差別を糾弾する社会運動を続け、メディアの大多数による悪意ある報道の中で「金持ちの息子は大学に行き、貧乏人の息子は戦争に行く。そんなシステムを政府が作っている」と徹底抗戦の構えを取り続けたのでした。
シンプルではあったが、力強く、信念がこもっていた彼の言葉や、何よりまさに「蝶のように舞い蜂のように刺す」かのごとく自身の勇気と意見を巧みに表現した彼の姿勢は、社会問題についてはっきりと自身の意見を述べるプロアスリートの先駆けであり、50年以上経過した今でも彼ほどの社会的インパクトを残したアスリートは他にいないでしょう。
今週のおひつじ座も、とっさに訪れた機会において自身の率直な考えを表明していくことがテーマとなっていくはず。その際少なからずアリの後ろ姿に自分を重ねていくべし。
おひつじ座の今週のキーワード
社会に向けて言葉を放つ