おひつじ座
エロス的自由
エロスの復権
今週のおひつじ座は、荒々しい風のように心をかき乱すエロスのごとし。あるいは、矮小化された愛が本来の姿を取り戻しては胸底からせりあがってくるような星回り。
英語のキューピッドと言えば、背中に翼をつけて恋の矢を放つ気紛れな幼児の姿を連想しますが、もともとはギリシャ神話のエロスであり、その最古の相においては人間的な愛というよりは、生きとし生けるものに宿命的な生の衝動を表していました。
例えば、紀元前5世紀に生きたソポクレスは、弓矢を帯びてないエロスについて次のように合唱隊に歌わせています。
負けいくさを知らぬエロス、富も宝も奪うエロスよ、
(中略)
不死の神々もひとりとして君を免れえぬ、
まして命はかない人間は とわれて、狂うばかり。
合理的な理性や清らかな信仰だけでなく、名前のついていない感情や原始的で抑制のきかない本能を自己のうちに有する複雑な生きものである人間にとって、愛は時に危険なダイモン(神霊)であり、幸ある運命を与える一方で、波瀾の生をももたらしたのです。
19日におひつじ座から数えて「鼓動の高まり」を意味する5番目のしし座で新月を迎えていく今週のあなたもまた、まるで止まっていた時間が流れ出すかのように、自分の魂が再び力強く勢いづいていくのを感じていくことでしょう。
闘争と自由
例えばパブロ・ピカソは史上最も成功した画家である一方で、一生で何度も違う絵描きになったと言われていますが、それは一般的に想起される個人の成長過程から、彼が大いに逸脱していた何よりの証拠と言えるでしょう。
「わたしは発達などしない。わたしはわたしだ」、「絵は部屋を飾るためにつくられるのではない。私は古いもの、芸術を駄目にするものに対して絶えず闘争している」といった彼の言葉からは禅語の「日々是好日」に似た境地を感じます。
あるいは「ようやく子どものような絵が描けるようになった。ここまで来るのにずいぶん時間がかかったものだ」という彼の最晩年の言葉を聞くと、やはりピカソという人はただただ絵を描く喜びの中で自由自在にありたい人だったのだろうとも思えてきます。
今週のおひつじ座は、どれだけ童心に帰れるかどうかが1つの鍵になってくるはず。まずは自分自身の心臓の鼓動を感じることを大切にされてみてください。
今週のキーワード
わたしはわたし