おひつじ座
希求と恩寵
憧れを描き出す
今週のおひつじ座は、「紫陽花や流離にとおき靴の艶」(小川軽舟)という句のごとし。あるいは、乾いた現実の最中で憧れを見出していくような星回り。
雨の日が続くとどうしても気持ちも暗くなりがちですが、それでも視界に「紫陽花(あじさい)」の花が飛び込んでくるとなんだか嬉しくなってしまいます。
掲句は、作者がサラリーマンとしては働き盛りの四十代半ばに、所属する結社の主宰を継いだ翌年に詠んだもの。「流離」とあるのは、旅に生きた芭蕉のように、俗世を離れておのれの芸術のために生きてみたいという、文芸に携わる者としての憧れでしょう。
会社勤めを辞めたくても、やめられないのだ。そんな心情が、紫陽花の色がうつりそうな「靴の艶」へと託されているように感じられます。
6月6日におひつじ座から数えて「精神的高揚」を意味する9番目のいて座で、満月を迎えていく今週のあなたもまた、ひょんなことから今の自分とは対照的な理想のビジョンを見出し、憧れを膨らませていくことでしょう。
孤独のうちに予感は育つ
私たちが何か大事なことを解りかける時というのは、すべからく孤独なのではないでしょうか。つまり、安易なおためごかしで自分の魂の真実をごまかすことは間違ってもないような、乾きとも凍えとも取れるようなものを肌で感じている時に初めて、私たちは理想とかビジョンといったものへと開かれていくのだ、と。
この点について心理学者のユングは最晩年に出版された『ユング自伝』において、次のように言及しています。
「われわれがなんらかの秘密を持ち、不可能な何ものかに対して予感を持つのは、大切なことである。それは、われわれの生活を、なにか非個人的な、霊的なものによって充たしてくれる。それを一度も経験したことのない人は、なにか大切なことを見逃している」
ユングからすると、生活の必要十分条件とは、どこかの時点で自分だけの秘密にならざるを得ないものであり、「よく生きる」ということは、恐らく何らかのかたちで「なにか非個人的な、霊的なもの」との折り合いを予感していくということであるはず。
今週のおひつじ座は、そんな予感と秘密にひとり浸っていく時間を大切に心にしまっていきたいところです。
今週のキーワード
渇きと潤い