おひつじ座
よい頭はからっぽ頭
直感の生まれ方
今週のおひつじ座は、数学者・岡潔(おかきよし)の頭の中のごとし。あるいは、無意識を豊かに耕す時間を大切にしていこうとするような星回り。
数学といえば論理的な学問の代表のようなイメージがありますが、その研究を進めていく上では「情緒」こそが何より大切なのだと説いたのが、数学史に名を残す世界的数学者であった岡潔でした。
彼は数学の難問に取り組んでいた二時間半のあいだに自分の頭の中で起こっていたことについて、「全くわからないという状態が続いたこと、そのあとに眠ってばかりいるような一種の放心状態があったこと、これが発見にとって大切なことだったに違いない」(『春宵十話』)と述べています。
クリエイティブな数学上の発見は、じつは論理からではなく直感から生まれるのであり、彼はさらに次のように続けています。
「もうやり方がなくなったからといってやめてはいけないので、意識の下層にかくれたものが徐々に成熟して表層にあらわれるのを待たなければならない。そして表層に出てきた時はもう自然に問題は解決している。」
週明け早々の5月11日におひつじ座から数えて「意識的な取り組み」を意味する10番目のやぎ座で、土星の逆行(常識の反転)が起きていく今週は、無意識は意識よりも強いのだということを改めて思い出し働きかけていくことがテーマとなっていきそうです。
昼寝あとの浮遊感
岡潔は「乾いた苔が水を吸うように学問を受け入れるのがよい頭といえる」とも述べていますが、ここで思い出すのは昼寝後に覚える感覚です。
あのうたた寝から醒めた後の、なんともいえない不思議で静かな感じを抱いた経験は、誰にでもあるのではないでしょうか。
あたりがしんとしていて、何の音もしない。まるで天地の間に我一人だけが在り、孤独とも違う、寂寥というのでもない、この宇宙の中に自分だけポツーンと置かれているような幽閑とした浮遊感。
そしてしばらくすると、家の外からかすかにリズミカルな物音が聞こえてきて、少しホッとするのと同時に、あの不思議な感じは煙のようにどこかへ消えてしまう。
今週は、そんなふうに独り天地と一体化する感覚を通して、日常の束縛からふっと逃れ出ていく中で無意識を大いに耕していきたいところです。
今週のキーワード
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