おひつじ座
精神が死なないために
ありのままに観察し続ける
今週のおひつじ座は、「怒り妻蚊帳に大波立てて出し」(桜井土音)という句のごとし。あるいは、予定調和が崩れていくプロセスをおおらかに受け止めていくような星回り。
蚊帳の中の妻を愛する、などという予定調和から大きく逸脱しているところが痛快な一句。妻の怒りは、おそらく夫である作者自身に端を発したものだろう。
なぜ「怒り妻」になってしまったのか、自分のどんな振る舞いが妻の怒りを誘発したのか、作者には分からない。
ただし、分からないものを強引に既存のボキャブラリーの中に押し込んだり、何事もなかったことにしようとする代わりに、作者は「大波を立てて」蚊帳を出ていく妻の様子を克明に観察し、それを句にして詠んだのだ。
確かに滑稽味はあるが、一方でどこか地に足のついた実直さを感じさせるのは、作者が大地を耕し、日々を田畑とともに生きた百姓俳人でもあったこととも深く関係しているだろう。
田畑に実る作物こそ、予定調和からの逸脱がつきものであり、それにいちいち人間の側の都合を押し付けたり、戸惑って何もせずただ呆然としているのでは百姓などとても勤まらない。その意味で、現代人がとうに失ってしまったものを作者はしかと持っているのだとも言える。
7日におひつじ座から数えて「弱る感覚」を意味する8番目のさそり座で、満月が起きていく今週のあなたもまた、戦前の田舎で日々自然と向き合ってきた作者のように、思い通りにならない現実から顔を背けず、ありのままに観察し受け止めていきたいところ。
自分が知らないということを自覚する習慣付け
別の言い方をすれば、何かを「知らない」、誰かを「思い通りにできていない」と認めることは失敗や落ち度ではなく、成功や評価への道筋であるということを、あなたは今週よくよく意識しておくべきなのかも知れない。ただし、その対象が自分自身である場合、私たちは往々にして落第してしまう傾向が強まる。
コーネル大学のダニング博士は、能力の低い人ほど「自分の無能さを認識できず、自己を実際よりも高く評価する(ひいては自信に満ちて見える)」という認知バイアスが働いているという研究成果を発表しているが、能力の多寡だけでなく、「自分が何を望んでいるのか?」ということに関して私たちは往々にして無知だと言える。
かつてソクラテスが言った「無知の知(何かについて自分が知らないということを知っている)」を自分自身に適応していくには、やはり想像力が働く余地を常日頃からつくっておく習慣の存在が不可欠であり、それこそが今週のおひつじ座の焦点となっていくだろう。
今週のキーワード
自殺とは想像力の断絶状態のことを言う