おひつじ座
違和感のある素顔
桜のようにただ咲きたいけれど
今週のおひつじ座は、「もう勤めなくてもいいと桜咲く」(今瀬剛一)という句のごとし。あるいは、本当の意味で「自由」に生きていくための環境の整備をしていくような星回り。
掲句の前書きには「退職」とだけある。咲いている桜を見ながら、不意に「もう勤めなくていい」という内なる声を聞いたのかも知れない。
長年の労苦を思い返し、解放の喜びを感じつつも、どこからか忍び寄ってくる寂しさもまた無視できない。仕事の肩書きや親や年長者などの役割から外れたところで、果たして自分は居場所や使命を見出せるだろうか。そんな漠然とした不安が湧いてくる。
そこでは、自分が社会や世界に「何を望んでいるのか」ということがより、直接的に生活形態や活動内容に結びついてくる。桜は誰に乞われた訳でもなく、自己を表現するためでもなく、ただ咲きたいように咲くけれど、人間にはそれがなかなか難しいのだ。
結局、「社会にどうあってほしいのか」なんてことは、当面自分が所属している社会への抜き差しならない違和感や反発からしか生まれてきやしない。
3月22日に試練と課題の星である土星が、おひつじ座から数えて「希望と願望」を意味する、11番目のみずがめ座に入っていく今週のあなたもまた、これまでしがみついてきた役割や肩書きから、自分を解き放っていくだけの勇気を振り絞っていきたいところ。
仮面と亀裂
日頃より懸命にこの世を生き、サラリーマン役であれ、恋人役であれ、家事と仕事を両立するシングルマザー役であれ、演じている役柄に熱心に打ち込めば打ち込むほどに、「本当の自分は何者なのか?」といった問いは、どんどん忘れ去られていく。というより、そうした忘却こそがこの世でうまく生きていく上での大前提なのだ。
しかし時折、役柄上の自分は本当の自分自身ではないのだということを、ふと感じてしまうことがある。一度それが出てきてしまうと、目の前で展開されていく現実劇や演技においてNGを出したり、今までスムーズに乗れていた脚本に乗れなくなったり、慣れ親しんだ日常舞台が、とたんに嘘っぽく、居心地の悪いものになっていく。
しばらくの間、これまで当たり前だと思っていた日常にふとしたきっかけから亀裂が入り、そこからニョッキリと顔を出してくる違和感や不安が無視できなくなった時、どうするべきかが問われていく機会が増えていくはず。
一方で、いろいろなしがらみから離れ、‟素顔”の自分を模索していける自己解放のチャンスともなっていくだろう。
今週のキーワード
鏡でじっと自分の顔を眺めてみること