おひつじ座
新鮮な既視感
宇宙船の子供たち
今週のおひつじ座は、宇宙船の窓からまだ知らぬ故郷・地球を想う少年少女のごとし。あるいは、自分の中に存在している、懐かしくも魅力的なビジョンを手繰り寄せていくような星回り。
ずっと先の未来、もし宇宙生まれの子供が生まれる時代になれば、自分たちのルーツである地球へ、大人になってから初めて訪れようとする人も出てくるかもしれませんね。
おそらくその時に彼らが感じるのは、既視感と新鮮さの不思議な融合でしょう。
そして、そんな未来の彼らと現在を生きる私たちは、何かに「新鮮さ」を感じるのは発見ではなく「再発見」に基いた体験であるという点で、根本的には同じなのです。
未来の少年少女が地球に既視感を抱くように、現在の私たちも宇宙に既視感を抱くことがある。
今週のあなたは、地下で燃え続けるマグマと上空の凍える真空とのあいだにはさまれたこの細長い土地に縛られつつも、それを越えたところで自分が経験しているはずのものへと、力強く思いを馳せていくことができるでしょう。
引用する私たち
厳密な意味でのオリジナルなんてものは、神話や伝承であれ、現代のコンテンツ作品であれ存在せず、何らかの元型を換骨奪胎して転調したり、表現や視点を再配列してずらしていくという営みの根は、思った以上にずっと深いものであるように思います。
「ひさかたの天知(あめし)らしぬる君ゆえに日月(ひつき)も知らに恋ひ渡るかも」
過去すでに亡くなった高市皇子(たけちのみこ)を現在の柿本人麻呂がしのぶこの歌などは、どこか『君の名は。』や『時をかける少女』などの作品世界を彷彿とさせるものがあるし、タイムリープものであればオルフェウス神話、はては匿名の民間伝承などにまで遡ることができるかもしれない。
今週は古くて新しい素材へとそっと手を伸ばし、「再発見」の瞬間へ向けて一歩ずつ距離を詰めていくような、そんな営みに人知れず手を出してみて下さい。
今週のキーワード
換骨奪胎