おひつじ座
波止場の魂
転移魔法と心移りと
今週のおひつじ座は、「冬の波冬の波止場に来て返す」(加藤郁乎)という句のごとし。あるいは、人生における‟来る波”と‟返す波”とが交錯していくような星回り。
「冬の波」という言葉が、冒頭から二度繰り返されている。繰り返すことで、次々と寄せ来る波の緊迫した実感を表そうとしているのでしょうか。
ただし、二度目の「冬の波」は単なる「冬の波」では終わらず、途中で「波」から「波止場」へと変わっています。漢字は重なっていますが、音は重なっていないところなどは、どこかだまし絵のようでもあり、実に巧妙なまなざしの‟切り換え”が行われています。
波の動きは‟来る”だけではなく‟返す”ものでもあり、両者が瞬時に交錯していく際のその眼の動きが、それまで繰り返されてきた言葉の意味そのものを書き換えていくのです。
22日(日)に太陽がやぎ座入りし、冬至を迎えていく直前のタイミングである今週は、移りゆく季節とともにあなた自身もまた、根本のところで既に‟心移り”しつつあることを痛感していくことでしょう。
詩人の運命
俳人を含む詩人の目というのは、この世を光速で突き抜け天界や冥界に自在に遊びつつも、同時にどこまでも冷静で客観的であるものです。
というより、そうでなければ、やることなすことすべてが中途半端に見えてしまう呪いを、みずから負っていくことこそ彼らの仕事なのではないかと思います。
世間の無理解など何するものぞ。否、むしろ周囲からの無理解や怪訝なまなざしを浴びてこそ、詩人の目は養われる。
なぜなら人間とは、必然的に自分自身に対立するものであり、もし中途半端な願いの成就で自身を冷徹に裁きの対象にしていくことを妨げられてしまえば、自分のことを魂をもった人間だとは認識できないし、従って真の意味で自分を愛することもできないのです。
拒絶、悲劇、非合理な欲求。自分の中にそれらを見出すにつれ、あなたはその目に詩人の感性を宿し、選び取られた孤立のなかで、より大いなる自由を手にしていく感覚を掴んでいくでしょう。
今週のキーワード
運命の波乗り