おひつじ座
のろま、ゆえに崇高
のろまの効用
今週のおひつじ座は、「かたつむり甲斐も信濃も雨のなか」(飯田龍太)という句のごとし。あるいは、自分を取り囲んでいる時代や社会の奔流の中で改めて「身の丈」を再発見していくような星回り。
小さな「かたつむり」に比べれば、とてつもなく大きな国である「甲斐」と「信濃」の全体をさながら包みこむようにして降る、さらに広大な「雨のなか」。
それは、どこか欲望につぐ欲望を人生にわたって掻き立てられ続けている現代人の風刺画のようでもあり、またいつの世でも自分たちの手に余る自然の驚異や脅威に翻弄される人間存在の無常さに対する、直感のようでもあります。
加えて、動きの速い雨雲や川の流れと違って、かたつむりの歩みはひどくゆっくりにしか動けず、「のろま」にさえ見えてしまうもの。
しかし、だからこそかたつむりは人一倍雨によって生かされている自分を感じ、雨と共に生きることができるのであり、どんなにのろまに見えたとしても、その限りにおいて彼らは自分の生きる道を見失うことはないはず。
翻って、人間はどうか。自分はどうなのか。自分自身の星座であるおひつじ座で下弦の月を迎えていく今週は、そんな自分の立ち位置や身の丈ということを改めて思い出していきたいところです。
突き抜けた存在となるために
「かたつむり」はそのどこか愛嬌のある姿かたちで、古来より日本人に親しまれてきましたが、一方で揄やからかいの対象ともされ、例えば彼らの目は明暗をかすかに判別できる程度に過ぎません。
ただ、そんなかたつむりも、掲句のように「大いなる雨」とセットになれば、たちまちそこに大河ドラマのワンシーンのような深いインパクトが感じられてくるから不思議です。そこでかたつむりに宿っているものは何なのか。
あえて言葉にすれば、それは「崇高さ」でしょう。
これは、人が人を判断する物差しは基本的にひどく表層的かつ近視眼的なもので、本当の美しさというものはそういう物差しを超越しえたところで初めて宿ってくるということでもあります。
今週のあなたは、まさにそうしたことを自分の身を通して、改めて感じていこうとしているのかもしれません。
今週のキーワード
身の丈はちっぽけであるほどいい