おひつじ座
未来へ後ずさりしていく
必要のない過去から離れる
今週のおひつじ座は、「幼年の日の輝きの茅花かな」(鈴木貞雄)という句のごとし。あるいは、因縁を思い出へと変えていこうとするような星回り。
茅花(つばな)は河原などに群生するイネ科の多年草で、春先に槍のように細い鞘に花穂を包み、初夏になると鞘をほどいて銀色の美しい穂をなびかせる。
「幼年」であれば人の背丈のごとく感じられたかもしれませんが、大人になってみればもはやありふれた草っぱらを成すものの1つにすぎません。
そういう意味では、掲句は子供時代を懐かしんでいるというより、もはや戻れないところまできたのだという感慨が半分、あとはその寂しさを詠んだものと見るべきでしょう。
梅雨も間近になってくると、「茅花流し」と呼ばれる南風が吹きます。茅花の穂絮(ほわた)はそれに乗ってどこかへ飛び去っていくのです。
今週のあなたもまた、かつてならば生々しく「因縁」であると感じられたものが、「思い出」となりつつあることを感じていくことができるのではないでしょうか。
それは親との確執かもしれませんし、身近な相手への嫉妬や愛憎のようなものの場合もあるはずです。
二十四節気では万物が生長して天地に満ち始めるとされる「小満」を迎え、すっかり太陽がまぶしくなってきた今、おひつじ座の人たちはそういうものからそっと離れてしまったという感覚を抱いていくはず。
「引く」と「越す」
現在というのは、未来からくるものです。私たちはふだん、何も考えず生きていても自動的に過去から未来に移っていると思ってしまっていますが、これはとんでもない勘違いです。
たとえば「引っ越し」というのは、過去から未来に「引いて」、「越す」と書きますが、これは言い換えれば、生きるということは絶えず「バック・トュー・ザ・フューチャー」なのだということを端的な表れに他なりません。
古い家から身を「引いて」、新しい家へと「越して」いかなければならない。そうしないと、古い自分に閉じ込められて、過去に自分が作り出した残像に執着して、迷いの世界にさまよい込んでしまう。
そういう意味で今週は、改めて幸せの在り処が過去にではなく、未来からやってくるものなのだと思い直し、「引っ越し」していくタイミングなのだと言えるでしょう。
今週のキーワード
バック・トュー・ザ・フューチャー