おひつじ座
変化を感じるために
軽みとのどけさ
今週のおひつじ座は、「齢い急くとも桜餅ひとつずつ」(古澤太穂)という句のごとし。あるいは、「がむしゃらに頑張る」のをやめた分だけ、おのずと訪れた変化を実感していくような星回り。
私たちは、歳をとればとるほど、時間の進みが速くなっていく。それでますます先を急ぎ、残りの時間で少しでも何か大それたことを成し遂げてみせようとして、代わりに何か大切なものを見失っていく。「齢い急く(よわいせく)」とはその悲哀のことでしょう。
いよいよ5日(金)におひつじ座で新月を迎え、おひつじ座にとって1年の内で誕生日と同等に特別な節目を迎えていく今週は、そうしたそこはかとない不安を抱えた「非本来的な時間性」(ハイデガー)から脱していく大きなチャンスと言えるかもしれません。
そしてその際大切になってくるのが、過去から未来へ向けて流れ落ちていく急流に浮かぶ小舟で、のどかに桜餅でも食べているような、掲句の示す力の抜け具合。
餅もまた「ひとつずつ」しか食べることができないように、いくら未来に期待しようと、現在に没頭しようと、人間、1人じゃ大したことはできませんし、力む程にかえって舟は重みで沈んでしまうもの。
しん、と心を無にして、そのかすかなうつろいに意識を向けていきましょう。
永遠の旅人・西行
「願わくは花の下にて春死なむ」でよく知られる西行の残した別の歌に、次のようなものがあります。
「五月雨はゆくべき道のあてもなし 小笹が原もうきに流れて」(『山家集』)
ここで西行は、あてなく流れる五月雨(さみだれ)に、あてのない自分自身の旅路と、うき(浮き、憂き)世のはかなさを掛けています。
ただ、それは自分で求めていったものでもあり、けっして悲嘆している訳ではありません。
むしろ、求めていった先で出会う矛盾や疑問、悲哀と夢、得体の知れないものの気配。それらひとつひとつを感じて動いた先に、永遠なる旅の道しるべを見出していったのです。
それらのうちの1つでも、あぶり出していくこと。それが今週のあなたに与えられたテーマなのだと言えるかもしれません。
今週のキーワード
かすかなうつろい