おひつじ座
一花咲かせるということ
開拓者の宿命
今週のおひつじ座は、平成最後のエリック・ホッファーのごとし。あるいは、<試行錯誤>こそが自分の最も力強い武器なのだと、改めて言い聞かせていくような星回り。
人間にとって自分の才能を発見し、それを磨いていく上でどのような環境が望ましいかはこれまで多くの議論がなされてきましたが、ことおひつじ座の人を念頭に置くならば、放浪者と開拓者の親縁性について触れない訳にはいかないでしょう。
例えば、オーストラリア移住の前衛を務めたのは元受刑者や失業者だったし、シベリアに定住したのは囚人だった。アメリカでも初期の移住者は逃亡者や重犯罪人だったし、宗教的情熱に駆られた開拓者はむしろ例外的存在でした。
家を捨て、住み慣れた場所を離れ、困難を伴いつつも荒野に向かっていった者たちとは一体何者だったのか。
おそらくはかつてそのひとりであり、社会の最底辺に身を置きながら、独学によって思想を築き上げたエリック・ホッファーは次のように述べています。
「弱者に固有の自己嫌悪は、通常の生存競争よりもはるかに強いエネルギーを放出する。明らかに、弱者の中に生じる激しさは、彼らに、いわば特別の適応を見出させる。(中略)弱者が演じる特異な役割こそが、人類に独自性を与えているのだ。」(『エリック・ホッファー自伝―構想された真実』)
弱者で結構。
ただし、そこに退廃や逸脱だけでなく、創造の新秩序の発生を見ていくことができるならば、あなたもまた彼のように真の意味での開拓者となっていくことができるはず。
あだ花よ狂い咲け
エリック・ホッファーのような真の意味での開拓者というのは、どこかあだ花(徒花)と似ているところがあるように思います。
季節はずれで、実もつけずにはかなく散るのがあだ花。ただそれは裏を返せば、社会や親が期待する通りの“正しい”タイミングで、分かりやすさという枠の中で“矯正”されず、無事に生き延びてきた証しでもあるのではないでしょうか。
そういう意味では、天才というものもあだ花であり、彼らの存在がおひつじ座に示してくれるのは、たとえ世界中から反論されたとしても、いつだって自分の内側から生じた考えに快く、そして毅然と従っていこうということ。
21日(月)にしし座で月蝕の満月を迎える今週は、1つそんな決意を確かにしていきましょう。
今週のキーワード
荒木優太『これからのエリック・ホッファーのために―在野研究者の生と心得』