おひつじ座
精霊と天使、そして人間
精霊の産物
今週のおひつじ座は、「採る茄子の手籠にきゆァとなきにけり」(飯田蛇笏)という句のごとし。あるいは、自分が手間ひまをかけるべきものやコトを、直感的に感じとっていくような星回り。
収穫した茄子をカゴに入れるときに、茄子と茄子が触れ合って<きゆァ>と鳴いた。まるで生命をもった生きもののように。そんな作者のたまらない喜びが弾け飛んでいるかのような一句です。
おそらくそれは、丹精込めて育て上げたものだからこそ芽生える感覚なのでしょう。
少なくともここでは茄子はただの食べ物以上の何かであり、アニミズムと言えばアニミズムの世界ですし、土地に精霊が宿っているとするなら、精霊がその土地から採れた野菜となって現れているのだとも言えます。すなわち、精霊の産物。
これと触れ合ったとき、作者もまたなんだか無性に嬉しくなって「きゆァきゆァーっ」と鳴いていたのでしょう。すると茄子の方もそれに反応して、手元でポーンと跳ね、河へボーンと飛び込んでいき、水しぶきを立てる。これはもうさながら河童です。
今週のあなたもまた、思わず嬉しくなってしまうような交わりにおのれを集中させていくことで、これまで眠っていた感性が弾け飛んで縦横無尽に駆け回っていくような実感を得ていくことができるかもしれません。
クレーの天使
人のためとか、世のためとか、そういう手垢に染まった想像力は、今のあなたにとっては邪魔以外の何物でもないでしょう。
例えばパウル・クレーが日記に書いていた夢の話の中で、日本人の芸者に三味線の音を所望する次のようなくだり。
「心が誘惑に駆られると、たちまち私の耳はかすかに戸を叩く音をとらえた。その音に誘われていくと、小さな守護神が表れ、可愛らしい手をさしのべ、私を天界にそっと連れて行った」
こうした身体ごとふっと飛んでいってしまうような「軽み」の感覚こそが、おひつじ座が本来そなえている天性の魅力や文化を育んでいくのです。
なおクレーにとって「天使」とは、「傷つきやすさと極端な脆さを持ちながら、われわれ人間を保護する神的な存在」のことを指しているらしいのですが、これは「軽み」を別の側面から見た特徴と言うことができるかもしれませんね。
今週のキーワード
縄文