みずがめ座
夢を手放す
潰えた夢と生えてくる希望
今週のみずがめ座は、「土筆生ふ夢果たさざる男等に」(矢島澄男)という句のごとし。あるいは、通りすがりに潰えた夢をそっと拾って懐に入れていくような星回り。
春に地中から生えてきた土筆(つくし)は新たなる若い希望の象徴だが、それを野で発見していく男等はみな、すでに若さからは遠く離れた中年。夢とは決して果たされることのないものなのだよ、という作者の肉声が伝わってくるようで、残酷な句のようにも思えるが、読んでみると字面のインパクトが与えるほどには切迫感は感じられない。
夢というのは、想起されることでふたたび命を持つものなのかも知れない。
そして、むろん「男等」だけでなく女たちにだって、若い頃、それぞれに抱いた夢があったはずで、数えきれないほどたくさんの潰えた夢の残骸が、いまでも現実のそこここに埋まっているだろう。
あなたもまた、今週はそんな夢の残骸と何かしら出会っていくなかで、思いがけずそこに命を吹き込んでいくことになるかも知れない。それは決してつらいだけの体験ではないはずだ。
「あきらめる」と「手放す」の違い
今週のみずがめ座の星回りを見ていると、「放てば手に満てり」という道元禅師の言葉を思い出します。
すなわち、人間関係であれ、仕事であれ、恋愛であれ、もし何か悩みや葛藤を抱えているなら、最後の手段として、当の「それ」を一度手放してごらん、ということです。
ただし、それは単に中途半端な状態で何かを投げ出し、放棄せよということでは決してありません。そういう形で何かを「あきらめる」と、かえって執着を生み、後々まで引きずることになってしまいます。あきらめることと「手放す」ことは全く別の話です。
さながら、晩秋にカエデやイチョウなど、落葉樹の葉が黄や赤に変わっていくように、自然のおのずからの変容へといのちを手渡し、「それ」を自分の手元から解放していくこと。そうして、すっかり雑念や妄執で硬直してしまっていた頭の中を「からっぽ」にすること。それが道元の思う「手放す」のニュアンスだと思います。
今週は、すべてが変わりつつある最中においてこそ、自分もまた成熟し洗練されていくのだという実感を、少なからず得ていくことができるでしょう。
今週のキーワード
「放てば手に満てり」