みずがめ座
未知へのハードル
紐一本の演出
今週のみずがめ座は、「雪をんな紐一本を握りたる」(鳥居真里子)という句のごとし。すなわち、幻覚であれフィクションであれ、不気味なほどのリアリティーが宿るのを静かに待ち続けていくような星回り。
季語としての「雪女」は、豪雪が人にもたらす幻覚ということになっていますから、あくまで「吹雪」のような自然現象のひとつです。ですが昨今の擬人化ブームでは、こうしたものさえ可愛らしくデフォルメされてしまいそうですね。
しかし自然への畏れとは、何といっても「怖い」という実感であり、決して無理なく可愛らしく軽いものではありません。
もし現代に雪女があらわれたとしたら、どうだろうか。句の作者はそんな想像を働かせ、何をするか分からない不気味なリアリティーを宿らせるために、「紐一本」を握らせたのでしょう。
ちょっとした演出によって、目に見えない現実が具現化されてくることがあるのです。
リアリティーを宿す作法としての演出を心がけること。そこでの少しの違いが、今週を大いに左右するはずです。
ある詩人の幻視
ランボーはある手紙の中で、
「詩人は、その時代に、万人の魂のうちで目覚めつつある未知なものの量を、明らかにすることになるでしょう」
と書いているが、自分の個人的幸福の追求よりも、ある種の怖いもの見たさが打ち勝ってしまうところが、彼のような詩人の本質なのだと思います。
逆に、自分の経験した愛や苦悩をいかに「目覚めつつある未知なもの」にまで高められるかこそが、彼らの仕事の根底にあるハードルだったのでしょう。今週はそんな詩人のハードルを、あなたもまた越えていくのです。
今週のキーワード
未知の目覚め