みずがめ座
ももも
ユーモア百本ノック
今週のみずがめ座は、『草の雨蟇(ひき)も主(あるじ)も古りにけり』(正岡子規)という句のごとし。あるいは、非情な運命をとことん面白がっていこうとするような星回り。
結核を患って、まだ病人として療養生活をはじめたばかりの頃の句。ここでは、じめじめと降り続ける「草の雨」の中、長年にわたり庭に居着いているかのように威厳をもって鳴くヒキガエルと、病気で痩せ衰えはじめた家の主たる自分とを並列的に扱っています。
同じように「古る」すなわち年月の経過を経験しているにも関わらず、ヒキはますます肥え太って堂々としていく一方で、自分ときたら逆にこんなに痩せてしまったよ、と客観視にもとづくユーモアで降りかかった非情な運命を笑い飛ばしているのです。
作者の病気はこの後次第に悪化していき、この6年後には亡くなってしまうのですが、逆に言えばその間彼の精神が自暴自棄になることなく、最後まで精力的に仕事をこなすことができたのは、間違いなくこうしたユーモアの精神に他ならないでしょう。
そして、こうしたユーモア精神というのは、天性の資質として最初から備わっていたというより、病いに対抗するための武器として、作者が必死の思いで積み重ねていった結果、ここぞというタイミングで繰り出したり、自然と醸し出していくことができるものでもあります。
その意味で、6月29日にみずがめ座から数えて「訓練」を意味する3番目のおひつじ座で下弦の月(意識の危機)を迎えていく今週のあなたもまた、今こそ作者のごとく、自己への客観視に基づくユーモアをふりしぼっていくべきタイミングなのだと言えるでしょう。
「は」と「も」の違い
ナルシストというのは、誰かを愛しているふりをしながら、本当に愛しているのは自分だけで、しかもその事実に自分では気付いていない人のことを言いますが、仮に悪人との違いがあるとすれば、そうした自分への自覚の有無に他ならないでしょう。
もちろん、ナルシストと言っても自分を愛するという一点に関しては問題ないどころか、表現者として大いにプラスに働くこともあり得る訳で、それはすなわち自分「は」でなく、自分「も」であるが、それとなく伝わってくる場合です。
宇多田ヒカルの名曲『Automatic』の歌詞にも、嫌なことがあった日「も」という箇所がありますが、これは良いことがあった日はもちろんだけど、そうでない日でさえ、というニュアンスを端的に表現していて、「は」であった場合を想定すると、より大きなアクセントになっていることが分かるかと思います。
冒頭の子規の句もそうでしたが、こうした何かと「も」で繋がっていくことは、島同士を固定的に結ぶ橋である必要はなく、さながら島を行き来する連絡船の航路のような、ゆるやかさや自由の余地を感じさせ、それがユーモア精神ということにも通じていくはず。
今週のみずがめ座もまた、そうした勘どころを掴んで実践していけるかどうかが、鋭く試されていくでしょう。
みずがめ座の今週のキーワード
行間を固めずにゆらゆらしていくこと