みずがめ座
今週は頭が悪いから
きげんの悪い牛
今週のみずがめ座は、『頭悪き日やげんげ田に牛暴れ』(西東三鬼)という句のごとし。あるいは、自明な大前提をひっくり返していこうとするような星回り。
春になって、田んぼに紅紫色の花を一面に咲かせるのが「げんげ」。掲句は、おそらくは散歩中かなにかに、げんげ田の真ん中で、きげんの悪い牛がつながれた綱をピンと張って抵抗し、後ろ脚でもはねあげて暴れているところに出くわしたのでしょう。
げんげ田は、人間からすればどこかやさしげな色彩ののどかな光景ですが、牛からすればそれも気に食わないのでしょう。確かに4月の妙に生暖かい頃あいになると、頭の中身までドロリと溶けだしてくるような感じがして、なんだか頭が悪くなったような気がしてきます。
もしかしたら作者は、主人に逆らってでも暴れている牛を見かけて、「なんだ、お前もか」と思わずニヤリとしていたのかも知れません。
4月21日にみずがめ座から数えて「ベース」を意味する4番目のおうし座で木星と天王星の合(宗旨替え)を迎えていく今週のあなたもまた、いっそ掲句のような「牛」となってひと暴れしてみるべし。
不気味の谷を越えていけ
人ひとりが歩くのに最低限必要な道幅だけを確保して、その両側をとりさり、切り立った深い崖や谷をつくったらどうなるか。そういう道を「さあ行け」と言われても、ほとんどの人は足がすくんで動けなくなってしまうはず。これは一体なぜなのでしょうか。
このような谷を機械工学では「不気味の谷」と名づけましたが、最近は人型ロボットの様態があまりにも人間に近いときに違和感や嫌悪感を抱いてしまう現象として、より一般的に知られるようになってきました。
いずれにせよ、人間の知覚の中にはこうした「不気味の谷」がさまざまなかたちで潜んでいて、それは私たちの意識や精神、考え方や行動にまで、知らず知らずのうちに持ち抱えている物理的には不要の領域であり、その存在理由を合理的に説明のつかない「しっぽ」のようなものなのだとも言えます。
そして、こうした不気味の谷の問題は、例えばぎりぎりまでお酒を吞んでみたいとか、とことんハメを外してみたいとか、冒険や探検などで極限状態に身を置いてみたいとか、そういう自分の臨界値を越えた隠れた次元を覗いてみたいという衝動へと駆り立てます。
その意味で、今週のみずがめ座は、きわめて閾値を超えやすいタイミングと言えますし、普段なにげなくスルーしている日常の「隠れた次元」を覗いていくことになるでしょう。
みずがめ座の今週のキーワード
不合理ゆえに我ゆかん