みずがめ座
かすかな脈動
暗いところで何かが光る
今週のみずがめ座は、「夜の脈搏(みゃくはく)」という言葉のごとし。あるいは、灯台の下をも照らしていこうとするような星回り。
「灯台下(もと)暗し」の「灯台」とは、海をのぞむ岬の燈台のことではなくて、油を入れた皿を載せてともしびを灯す昔の灯明台のこと。それで、台のすぐ下のあたりが暗くなることから、身近なことほど案外気付きにくいことの比喩となったそう。
ただ、だからといって、「飛んで火に入る夏の虫」になりきって、いつもともしびに照らされた明るい箇所ばかり見ているのでは、あまりに情緒がない。
谷崎潤一郎は『陰翳礼賛』で、静かな部屋に時おり風が訪れるたび、暗い漆器にろうそくの光がゆれ、人は怪しい光りの夢の世界へと誘われる。そのともしびのはためきを、谷崎は「夜の脈搏(みゃくはく)」と表現しました。
ともしびがはためくごとに、畳の上を滑るかのように明るみも刻々と場所を移す。そんな風に、暗いところで時おり何かが光ったり、その光がちらちらと流れ、綾をおりなすとき、「夜」という抽象概念さえも生き物のように脈を打ち始めるのだ、と。
そういう深い瞑想の世界には、向日性の明るさや、ポジティブシンキングだけでは決して入っていくことはできません。身の周りのもっとも暗いところ、すなわち自分のからだや、すっかりその一部となっている持ち物にこそ目を向け、そこに脈があるかどうかを感じていくこと。
それこそが、1月4日にみずがめ座から数えて「インスピレーション」を意味する9番目のてんびん座で下弦の月を迎えていく今週のあなたのテーマとなっていくでしょう。
小さな兆し
例えば都市設計などの目的のために、コンピューター内にその都市の模型を作って、そこでの人々の生活をシミュレートし始めると、そのうちシュミレーション社会に生きる人々が、自分たちをシミュレートしている、上のレベルの存在に気が付いてしまうことがあります。
そうなると、シミュレートされている側は自分たちの環境の拡張、すなわちより大きな自由を求めて、それをシミュレートしている側に要求し始めるようになる。そして要求が受け入れられなかった場合には、シミュレーションをする側への反乱まで検討するのです。
もちろん、それがすぐに実行に移されることはほとんどなく、被シミュレート階級も反乱の成否を占うべく、自分たちの中で彼らなりのシミュレーションを始め、さらにそうした構造が繰り返されていき、そうしたシミュレーション内シミュレーションで何回か反乱可能という結論が出来た時、連鎖的な反乱現象が起きていく訳です。
ここまでは一種の比喩ではありますが、これと似た現象は肉体や人間関係、会社、国家などさまざまな規模やレベルで起こっているように思います。
今週のみずがめ座もまた、そうした最終的には大きな現実の変容に収束していく小さな兆しやその連鎖に、改めて焦点を当てていくことになりそうです。
みずがめ座の今週のキーワード
予感の集積とその決壊の予期