みずがめ座
米粒と瞑想
農の思想の看取
今週のみずがめ座は、安藤昌益の「米粒のなかで天地はひとつ」という思想のごとし。あるいは、世界と人間との一体化を具体的実践を通して実現していこうとするような星回り。
江戸時代に秋田藩の医師であった安藤昌益は、飢饉に見舞われた東北の厳しい環境の中で、仏教も儒教も何の役にも立たないことを身をもって痛感し、当時の身分制社会を公然と批判したことで、日本的な社会主義の祖としても知られていますが、その真髄は独自の世界観に裏打ちされた「農の思想」にありました。
彼の著作『続道真伝』によれば、この世界は始めも終わりもない自然の運動で、それは通(下から上への垂直運動)・横(水平運動)・逆(上から下への垂直運動)からなり、通により天地が成り立ち、横により人間の住む世界が確立し、逆により穀物が生ずるとされ、中でも米こそが天地を凝縮したものであり、人間も米粒から生まれてくるものと構想されたのです。
米粒にすばらしい働きが具わっているのが、転定(天地)の太陽や月であり、人の霊魂である。(中略)米粒に転の穀物、定の穀物が具わり、転の穀物に定の穀物が具わり、定の穀物に転の穀物が具わっているのは、転定が一体ということである。男女は、男の中に女が具わり、女の中に男が具わり、男女で一人だということである。
小さな米粒のひとつひとつに人の原形がこめられ、それを食べることで人の命も継続する。ここには経済を回すより、いのちの継続を願い、それを世界と人間との一体化を実践していくことで実現していこうとした安藤の思想には、現代の日本人が改めて自然の中の人間の在り方を取り戻していくための大きなヒントがあるように思います。
11月8日にみずがめ座から数えて「世界への対し方」を意味する10番目の星座であるさそり座後半に太陽が入って立冬を迎えていく今週のあなたもまた、いかに社会や世界との一体感やその豊かさを感じ直すための礎を見出していけるかがテーマになっていくでしょう。
いちごの瞑想
日常生活のあらゆる所作を通して意識の目覚めをもたらす実践にマインドフルネス瞑想がありますが、その簡単な実践法の一つとして「いちごの瞑想」があげられます。
これはいちごに対して普段抱いているイメージを一語で構わないのでまず紙に書き出してから、実際にいちごを手に取って口に含み、飲み込むまでの過程を、いつもの何倍もていねいに感じながら食べてみるというもの。
ポイントは、いちごの色つや、口の中に広がる果汁、ぷちぷちっとしたつぶの感触、のみこんだ後に残る後味。それらひとつひとつの出来事を微細に受けとりながら、体験の推移を注意深く見守っていくこと。
そうして「食べる」という行為に全神経を注いでいくとき、味覚だけでなく、耳に入ってくる音や、肌に触れる感触、視界の明度や鼻腔を刺激する匂いなど、他の五感もいつもより鋭敏に情報を拾いはじめ、たった一粒のいちごにさまざまな驚きが隠されていることを実感したとき、普段忘れていた細胞が目覚めていくかのような静かな高揚感が広がっていくのです。
今週のみずがめ座は、そうやってからだや心の中のプリミティブでなかなか言葉にできないレイヤーの働きとつながってみるべし。
みずがめ座の今週のキーワード
視覚偏重からの脱却