みずがめ座
だんだん調子を合ってくる
発するものと受けとるものが一つの祈りの声となるまで
今週のみずがめ座は、『水音と虫の音と我が心音と』(西村和子)という句のごとし。あるいは、ひとつの営みを通して意識を研ぎ澄ませていくような星回り。
3つの自然音が折り重なってつくられた一句。ただ虫の音と心音とが聞き分けられるということは、水の音はかなり抑えられているか、少し離れたところから聞こえてくるのでしょう。
少なくとも、轟轟とした滝つぼだとか、大河川の響きではなく、せいぜい穏やかな小川の流れなどを想像するくらいでちょうどいいかも知れません。おそらく、作者は非常にリラックスした状態で目をつぶってこれらの音の重なりあいに耳を澄ませている。
水の「音(おと)」、虫の「音(ね)」、心「音(おん)」と読みを分けているのも、それらがけっして作者の中で一緒くたになってノイズのようになってしまっているのではないことの表現であり、繰り返し掲句を音読していると、まるで句全体が作者の祈りの声のように感じられてくるはず。
9月7日にみずがめ座から数えて「創造性」を意味する5番目のふたご座で下弦の月を迎えていく今週のあなたもまた、雑音が聞こえなくなるまで、丁寧に自身の内部を調整していくことがテーマとなっていきそうです。
リズムに入って、持っていく
能の教えに「軽々と機をもちて」というものがあります。これは「
序は始まりのことで、時間がたって熱してくる頃が破、そしてクライマックスを迎えて終わるのが急。日本に限らず、アジアやアラブの音楽のリズムもこの序破急になっています。
だからどうしても「序破急」と言われると、当然始まりはゆっくりとやるもので、それで当然と思い込んでしまう訳ですが、世阿弥が生きた当時、能は必ずしも静かな場所で行われるとは限らず、酒宴の席など雑然とした場所で行われることも多かったそうです。
そこで世阿弥の言った「軽々(かるがる)と機をもちて」とは、序にある役者は自分の気持ちを軽やかに引き立てて、場や相手のリズムにそっと合わせていくのがいいと言っているのです。固くなりすぎず、かといって自分勝手にくだけすぎもせず、まず場や相手のリズムに入り込んでから、いつの間にか自分のリズムに持っていく。
役者としての成熟とは、いくつものリズムを自分の身体の中にもっているということであり、それはそのまま今週のみずがめ座にとっても、大いに指針となっていくはず。
みずがめ座の今週のキーワード
「軽々と機をもちて」