みずがめ座
読むと書く
なぜ本を読むのか
今週のみずがめ座は、本を読む人々のごとし。あるいは、隠された自分自身を見つけ出し、潜在的な自分の一部をめくっていこうとするような星回り。
こんなにも多種多様な動画がかんたんに視聴できるようになった時代に、あえて本や文章を読む人がいるのかと言えば、それはそこに文学があるからでしょう。
文学とは、大っぴらには目撃することのできないようなひそやかなものであり、機を逃せばたちまちこの世から消えてしまうそうな心細いものであり、それゆえにこそ、まだ言葉にされていない自分の一部を重ねられるものであるはずです。
したがって、本や文章が文学的であればあるほど、つまり、一文一語がていねいに考え抜かれ、創り出されていて、そこにリアリティが宿っているならば、人びとはたとえ隠しておいたとしてもそれを見つけ出し、本を読むのです。
彼らはスマホを見たり、テレビをつけるのが面倒だから本を読むのでもなければ、たまたま興味をひかれる映画や音楽が見つからなかったから本を読むのでもなく、そこに他では見つけることのできない自己の真実を見つけることができるから、本を読むのです。
その意味で、30日にみずがめ座から数えて「純粋な喜び」を意味する5番目のふたご座で新月を迎えていく今週のあなたもまた、だんだん自分自身になっていくための儀式として文学を求め、それを何かが書かれた断片のなかに見つけ出していくことでしょう。
薄明の窓辺に置かれた言葉
そうした営みは、例えばエミリー・ディキンスンの『可能性の家』という詩の中にも見出すことができます。彼女の生涯を通して最も豊作の歳に書かれた詩を引用してみましょう。
可能性の家に暮らしています
散文よりも、すてきな家です
窓が多く
入口も魅力よ各部屋は 杉の木立
人目は避けられるし
朽ちない天井は
天空の丸屋根訪れるのは このうえなく美しきものたち
そして 仕事は――小さい腕を
精いっぱい伸ばして
摘み集めていくの 楽園を
(内藤里永子訳)
詩は、彼女にとって「散文よりもすてきな家」であったと同時に、だんだん自分自身になっていくための挑戦の場でもありました。今週のみずがめ座もまた、自分たちの存在するこの世界を居心地のいい素敵な世界にしていく上で、まずはどれだけ自分自身を喜ばせることができるかが問われていくでしょう。
みずがめ座の今週のキーワード
自分の本当の気持ちに正直でいること