みずがめ座
奥深い感情のスイッチを探す
関係の奥に横たわる秘密
今週のみずがめ座は、『そら豆を剥き終らば母に別れ告げむ』(吉野義子)という句のごとし。あるいは、あえて割り切ることで割り切れない思いを受け取っていくような星回り。
久しぶりに実家を訪れた娘が、老いた母のもとを去りがたく思っての一句。そろそろ最終の電車やバスの時間が迫っているのか、母の夕食用のそら豆を剥き終わったら帰らなければならない。
これが父と息子であるとか、母と息子であれば、もう少し別れも素っ気なく淡白なものになると思うのですが、同じ親子でも、母と娘の関係には何か特別なものがあるのかも知れません。
そして、日常のちょっとした別れを何気なく詠んだはずなのに、掲句にはまるで今生の別れのような雰囲気が漂っているのは、おそらく作者が手にしているのが「そら豆」という柔らかでどこかエロティックな素材であるということも大きいのではないでしょうか。
野暮を承知で言えば、母子の縁の特別さとは、女性という因果な性を引き受けて生きざるを得なかった者同士で共有された秘密によって担保されているものなのかもしれません。
同様に、5月9日にみずがめ座から数えて「特別な他者or対象」を意味する7番目の星座であるしし座で上弦の月を迎えていく今週のあなたもまた、特別な縁を感じる相手or対象とこそきちんと距離をとっていくことがテーマとなっていきそうです。
人生という旅日誌をめくって
人生がひとつの「旅」だとして、人はただ旅をしていくだけでなく、その記録をさまざまな形で残していったり、また他の誰かが書き残した“秘密”を読み解いていこうとします。そして書物を読み解くということは、それ自体が「小さな旅」のようなもので、時にそれはいつまでも終わることのない旅として人生に併走し続けることになっていく。
例えば、サン=テグジュペリの『小さな王子さま』(山崎庸一郎訳)も多くの人にとってそんな作品の1つであろうと思いますが、その中には次のような一節が出てきます。
「砂漠が美しいのは」と、小さな王子さまは言いました。「それがどこかに井戸を隠しているからだよ…」
わたしは、突然、この砂の謎めいた輝きのわけがわかってはっとしました。少年だったころ、わたしは古い家にすんでいましたが、そこには宝が埋められているという言いつたえがありました。もちろん、だれもそれを発見した者はいませんでしたし、たぶんそれを見つけようとした者もいませんでした。
掲句に詠まれた「そら豆」の山もまた、ここで話されている「砂漠」の1つだったのではないでしょうか。その意味で、今週のみずがめ座は、他ならぬ自分自身のたましいを掘り起こし、そこにまだ見ぬ泉を見つけていこうとしているのだと言えるかも知れません。
みずがめ座の今週のキーワード
秘密の核心はそら豆のなかに