みずがめ座
不屈のシンボル
溢れだすエネルギーの表現
今週のみずがめ座は、「二十のテレビにスタートダッシュの黒人ばかり」(金子兜太)という句のごとし。あるいは、理念を自分なりの形にして打ち出していくような星回り。
昭和43年(1968)の作。前書きに「帯広にて」とありますから、旅先で出会った場面を詠ったもの。この年は全国の放送局のほとんどがカラー放送化した年であり、翌1969年は日本のテレビ生産量が世界一となるなど、急速にカラーテレビが普及し始めていた頃であり、作者は旅先の好奇心も働いて、何気なく家電大型店の店内を覗いてみたのでしょう。
すると、画面のどれにもスタートを切った瞬間の黒人ランナーの姿が大映しになっており、それらがいっせいに二十の映像として目にはいって来たのです。しかもどの顔も黒く輝いている。
掲句は五七五の十七音定型から大きくはみ出していますが、はみ出した音数がそのままランナーの爆発させているエネルギーや、テレビという新しい社会現象の語感と相まって、鮮烈な印象を作り出しています。
7月28日に自分自身の星座であるみずがめ座へ、逆行中の木星が戻ってくる今週のあなたもまた、生きる力と問題意識を十全に伝えていくことがテーマとなっていくでしょう。
ブラックパワーの称揚
この年はメキシコでオリンピックが開かれた年でしたが、メキシコ五輪は人種問題で大いに揺れた大会でもありました。
IOCがはじめて当時アパルトヘイト政策をとっていた南アフリカの五輪参加を認めたことで、アフリカ諸国を中心に多くの国が大会のボイコットを宣言し、そのためIOCはやむなく南アフリカの参加決定をとり下げることにもなりました。
また、陸上短距離男子二百メートルで金メダルと銅メダルを取った二人のアメリカの黒人選手が、表彰式で黒人の貧困を象徴するため、靴を履かず黒靴下のままメダルを受け取り、さらに星条旗が掲げられ国歌が演奏された時、頭を垂れながらブラックパワーの象徴である黒手袋の握り拳をたかだかと突きあげたのです。この場面は、当時世界中の新聞の一面を大きく飾りました。
掲句の作者がどこまでこのことを知っていたかはわかりませんが、それまでの人種問題は間違いなく念頭にあったはずです。
今週のうお座もまた、そんな作者のように、差別に抗い、差別の根絶に立ち向かう人々の不屈の力を感じ取っていこうとするでしょう。
みずがめ座の今週のキーワード
メキシコ五輪から東京五輪へ