みずがめ座
恥があふれる
こちらは4月12日週の占いです。4月19日週の占いは諸事情により公開を遅らせていただきます。申し訳ございません。
みなごろし
今週のみずがめ座は、東京目黒の権之助坂の「おさわりバー」のごとし。あるいは、自分の中に息づく因果の種が育ち始めていくような星回り。
今のソーシャルディスタンスが当たり前になった世の流れとは逆行するような話ですが、いぜん東京目黒の権之助坂に「おさわりバー」なるものがあったのだそうです。
看板には「鏖」と書いてあり、読み方は「みなごろし」。なにがしかの金と引き換えに、さわったり、さわられたりして、いい気持ちになる訳ですが、とどのつまりは、この店に来るのは「みなごろし」にされたいからであって、来る日も来る日も殺して欲しくて金を握って来る男でごった返していたのです。
鬱陶しいことこの上ない話ではありますが、あれは恐らく、自分のなかに潜む魔物にさわってほしくてそうしていたのでしょう。もちろん、本当はさわられない/さわらない方がいいことは百も承知だけれど、「さわりたい」「さわらずにはいられない」というどうしようもない因果が人という生き物の中には息づいているのでしょう。
厄介ではあれど、決して無視はできない。「おさわりバー」の存在は、世の中にはそういうことがあるのだということを、不思議と思い出させてくれるのです。
12日にみずがめ座から数えて「よみがえり」を意味する3番目のおひつじ座で新月を迎えていく今週のあなたもまた、久しく忘れていた得体の知れない何かが自分のなかから這い出てくるのを感じていくことでしょう。
恥をガソリンにして
詩人はなぜ、詩を書くのか。それに対する最も説得力のある答えは「恥」の感情でしょう。
つまり、ぬぐってもぬぐっても汚れの落ちきらない不快な傷跡だから、言葉で飾ってつかのまの安堵を求めるのであり、だから詩人の書き上げる詩の透明度とは、詩人の人生の汚染度であり、言葉になった珠玉の数はすなわち恥の数に他ならないのではないでしょうか。
恥の上に恥を重ね、それを捨てることもできずずるずると引きずり、数えきれない恥を数珠のように繋ぎあわせながら、未練がましくそれを首に巻いて歩いていく。
……と、抽象的に書き出せばいくらか上等に聞こえますが、要ははっきりと自己主張する度胸もなくてにやにや笑ってごまかしたり、憐憫の情につけこんで何かものをもらったり、さんざん人を振り回しておいて悪気はないとうそぶいて最後は逃げてしまったりと、私たちの誰しもが持ち得るような、およそ平凡な痛みに貫かれているのが詩人の魂なのです。
恥があふれにあふれて、両の掌からこぼれ落ちたとき、それが砂金のようにきらめく詩篇となっていく。「みなごろし」というのも、もしかしたら本当はそんな瞬間のことを言うのかも知れません。
今週のキーワード
恥の数珠繋ぎ