みずがめ座
不意に呼び覚まされる
※当初の内容に誤りがありましたので、修正を行いました。ご迷惑をおかけし大変申し訳ございません。(2021年1月25日追記)
霜の声に重なるように
今週のみずがめ座は、「まだよまぬ詩おほしと霜にめざめけり」(田中裕明)という句のごとし。あるいは、ふとなすべきことに呼ばれていくような星回り。
夜更け、ふと目が覚めたとき、誰かに呼ばれたような気がした。まだ自分が出会ったことのない詩に呼ばれたのだ。
それは作者の心の中からの呼び声なのでしょう。「霜に」とあるので、それは同時に寒さの中で霜が生まれる音とともに呼び覚まされたものでもあります。
「まだよまぬ」とあえてひらがなにしてあるのは、恐らくそこに二通りの解釈を重ね合わせたから。一つは古今東西の詩人がつくってきた詩を自分はまだ“読”んでいないのだ、という思い。もう一つは、まだ自分が“詠”むべき詩がたくさんあるという思い。
作者はこの時すでに白血病を患って闘病中でしたから、特に後者の思いは強かったはずです。作者はこの句を詠んでまもなく、45歳の若さで亡くなりました。
29日にみずがめ座から数えて「邂逅と残照」を意味する7番目のしし座で満月を迎えていく今週のあなたもまた、そんな風にふいに誰か何かに呼び覚まされるような思いをしていくことになるかも知れません。
松岡正剛がボルヘスを明治神宮に案内した話
当時80歳でほとんど失明状態だったボルヘスは、玉砂利を踏む人々の足音に耳を傾けつつ、何かを比喩に置き変えようとしていたのだそう。
しかも、ボルヘスは神社の見かけや構造など目に見えない景色を必死に想像していたのではなく、「これを記憶するにはどうすればいいか」というようなことを、ぶつぶつと呟いていて、それはこんな調子だったという。
「カイヤームの階段かな、うん、紫陽花の額にバラバラにあたる雨粒だ」
「オリゲネスの16ページ、それから、そう、鏡に映った文字がね」
「日本の神は片腕なのか、落丁している音楽みたいにね」
「邯鄲、簡単、感嘆、肝胆相照らす、ふっふふ‥」
まるで熟練のダンサーが新たなステップを生み出していくようではありませんか。
今週のみずがめ座は、暗闇の中で踊るダンサーのごとく。あるいは、余計な雑音をシャットアウトして、研ぎ澄まされた感覚の奥から聞こえてくる内なる声に従って動いていくことがテーマなのだとも言えるでしょう。
今週のキーワード
マジックリアリズム