みずがめ座
読むと考える
第三の道
今週のみずがめ座の星回りは、本と付き合う3つの態度のごとし。あるいは、創造的慣性の作用を起こしていくこと。
外山滋比古さんは名著『知的創造のヒント』の中で、「本との付き合いは人間同士の付き合いと似ていて、はじめは仲良くしていてもやがて意見が合わなくなったり互いの期待に沿わなくなって別れ別れになるものとしつつも、そこには大きく三つの道がある」と述べています。
第一は、どんなにおもしろい本でも必ずどこかに不満が起きるところがあるので、そこを押し広げていって批判や批評を展開するという否定的創造の道。しかしこれはどこか哀れな気がするとも吐露しています。第二はその逆で、すぐれた教科書などを読むときのように、どこまでも信用し、言われるがままに付いていくやり方。しかしこれも受容一辺倒が固定化してしまうと、本に読まれるようになってしまう。
その点、第三は本がおもしろくなってきたところで、あえてその本と別れるのだそう。もちろん、それでは十分な知識を本からインストールすることはできません。ただその代わり、自然に新しい考えを持つことは可能だと言います。
これは本を読むにも慣性が働いており、読み切らないで、おもしろくなりそうなところで、つまりスピードが出てきたところで、そこに生じる慣性を利用して自分の考えを浮かび上がらせようとすることに主眼があるのだそうで、こういう本の読み方を自覚的に行うにはかなりの自制心や明確な目的意識が必要なように思います。
21日にみずがめ座から数えて「自覚と洗練」を意味する6番目のかに座で先月に続き2度目の新月を迎えていく今週のあなたもまた、本であれ実際の人間関係であれ、いかに自分を律して創造のレールへ乗せていけるかが問われていくことになりそうです。
文脈を利用する
政治学者の丸山眞男は『日本政治思想史研究』において、「明治の初めに日本が西洋と対等になろうとしたのは、西洋に同化するためではなく、西洋から自分をよりよく守るための手段を見出すためだった」ということについて言及しましたが、こうした明治維新への洞察はどこか今週のみずがめ座のテーマと通底するところがあるように思います。
文化人類学者のレヴィ=ストロースは、日本はヨーロッパと太平洋の架け橋の役割を果たし、ヨーロッパと対極的な歴史を発展させてきたと考え、19世紀に起きた日本の動きを18世紀フランスの動きと比較して、日本の歴史を「月の裏側」に例え、丸山をそうした歴史に取り組む学者の1人に挙げました。
これはギリシャ、ローマ以来のヨーロッパの歴史を「月の表側」とした時、それは歴史の半面でしかなく、日本やアメリカなどの歴史の動きをその内側から洞察していくのでなければ、真の歴史理解には繋がらないという彼の考えの現れでもありました。
今週のあなたは、まさに太平洋戦争のただなかで明治維新の本質を看破した丸山のごとく、自分が身を置く社会やコミュニティの文脈に半ば付き合い、半ば距離をおいて利用していく姿勢が求められていきそうです。
今週のキーワード
独立思考家