みずがめ座
窓と波と潮
窓を抜けたその先で
今週のみずがめ座は、永瀬清子の『窓から外を見ている女は』という詩のごとし。あるいは、苦しい固定観念を抜け出していく道を模索していくような星回り。
詩人が短い言葉に凝集して、戦後の混迷期に生きた女性の生活実感を描いた作品集に入っている詩のひとつに、『窓から外を見ている女は』という詩があります。
産業構造が変わって、女性たちも農業以外の多様な職業につくようになり、それに伴って多くの女性が新しい生き方を余儀なくされる中で自由と不安とのはざまで揺れる日々を過ごしていきました。この詩はまさにそんな女性たちへの応援歌の一つと言えるでしょう。
「窓から外をみている女は、その窓をぬけ出なくてはならない。
日のあたる方へと、自由の方へと。
そして又 その部屋へ かえらなければならない。
なぜなら女は波だから、潮だから。
人間の作っている窓は そのたびに消えなければならない。」
この「窓」とは女性たちを縛る古い社会のしきたりや、保守的な価値観のメタファーとも読めますし、何より「女」自身の中にある社会や文化などによって規定された固定観念なのではないでしょうか。
興味深いのは、この詩では「女」はそうした「窓」を抜け出していくだけでなく、「潮」のように「かえらなければならない」と書かれている点です。ここでは、女性という性が根底に有している強さや自然が、社会や文化のつくりだす人工物をこえたスケール感を持つものとして捉えられているのです。
6月28日に「生き延びる力」を司る火星がみずがめ座から数えて「女神の場所」を意味する3番目のおひつじ座へと移っていく今週のあなたもまた、社会や市場に規定されがちな価値基準から抜け出し超えていくための一歩を踏み出していきたいところです。
連続する波の一つとして
トルストイは『人生論』という著書の中で、死後の生ということを一生懸命考えているのですが、そこには次のような一文が出てきます。
「人間は、自分の生が一つの波ではなく、永久運動であることを、永久運動が一つの波の高まりとしてこの生となって発現したに過ぎぬことを、理解したときはじめて、自分の不死を信じるのである。」
普通、死後に残るのはその人の思い出だけですが、トルストイはそうではないと言っているのです。ひとつひとつの「波」はあくまで大きな海潮の一部であり、海流としての自分(世代を超えた働きかけ)という視点で生きることができた場合、その人が死んで肉体は滅びたとしても、世界に対して作られた関係によって、より一層その働きが力強くなることもあるのだ述べています。
こうした視点もまた、ある意味で冒頭の詩の内容に通じていくものと言っていいでしょう。
今週のキーワード
連続性のなかで自分を見つめる