みずがめ座
天女とあだ花のあいだ
反語としての「天女」
今週のみずがめ座は、永瀬青子の「諸国の天女」という詩のごとし。あるいは、華やかではなくとも、勇気をもって生活していこうとするような星回り。
高度経済成長を遂げる前、特に戦前の日本はまだ農本主義社会であり、そこでは女性たちもまた農家に嫁いで男性とともに額に汗して働く生活をすることが一般的でした。
詩人の永瀬青子は、そんな各地で苦労しながら暮らしている女性たちをあえて「天女」と呼んで、彼女たちを勇気づける詩を書きました。1940年に刊行された初期の詩集『諸国の天女』の冒頭から。
「諸国の天女は漁夫や猟人を夫として/いつも忘れ得ず想つてゐる、 底なき天を翔けた日を。
人の世のたつきのあはれないとなみ/やすむひまなきあした夕べに わが忘れぬ喜びを人は知らない。
井の水を汲めばその中に/天の光がしたたつてゐる/花咲けば花の中に/かの日の天の着物がそよぐ。
雨と風とがささやくあこがれ/我が子に唄へばそらんじて/何を意味するとか思ふのだろう。
せめてぬるぬる春の波間に/或る日はかづきつ嘆かへば/涙はからき潮にまじり/空ははるかに金のひかり」
※「たつき」=生活を支える手段・方便
※「かづく」=水にもぐる
20日にみずがめ座から数えて「みずからの足で立って歩くこと」を意味する3番目のおひつじ座へ、太陽が入り春分を迎えていく今週のあなたもまた、きっと彼女が詩に書いた「天女」のように力強く日々を刻んでいくだろう。
生き延びてきた証し
天女と対となる存在としては、あだ花が挙げられるのではないか。デジタル大辞泉をひくと、あだ花(徒花)とは
1 咲いても実を結ばずに散る花。転じて、実(じつ)を伴わない物事。むだ花。
2 季節はずれに咲く花。
3 はかなく散る桜花。あだざくら。
むだで、季節はずれで、実もつけずにはかなく散るのがあだ花。ただそれは裏を返せば、社会や親や周囲の期待する通りの“正しい”仕方で、世間様に役立つ人間であれと、自分以外の誰かしらに“矯正”されずに無事生き延びてきた証しでもあるはずだ。 天女か、あだ花か。今週のみずがめ座は、そのどちらをも視界にとらえていきたいところ。
今週のキーワード
花勁し