みずがめ座
一枚の宗教画のごとく
気品の由来
今週のみずがめ座は、「山川にひとり髪洗ふ神ぞ知る」(高浜虚子)という句のよう。あるいは、ひとりしずかに気高さを宿していくような星回り。
これほど気品に満ちた一句も、そうそうないのではないでしょうか。誰一人いない山川の髪を洗っている女を包むのは大自然だけであり、彼女の姿を見ているものがあるとすれば、それは樹々や山や空や雲のみ。
けれど、この句の「神ぞ知る」というのは、誰も見ていないという意味の一方で、誰も見ていないが誰か―神くらいは、それを見ているだろうという意味も含まれています。
髪を洗う女の姿態が、どこかつつましく、気品に満ちて感じられるのは、「神」との極私的な関係を守り、養っていこうとする献身がそこに見え隠れするからでしょう。
12月3日(火)に「拡大と発展」の木星が約1年ぶりに星座を移り、みずがめ座から数えて「浄化と忘却」を意味する12番目のやぎ座へ入っていく今週のあなたもまた、余計なまなざしや、そこに含まれた暴力性を身の周りから洗い流すべく、自分のための特別なひとときを大切にしていきたいところです。
宗教的人間
アインシュタインは『私の世界観』という著書の中で、
「われわれの経験しうるもっとも美しいものは‟神秘的なもの”である。それは真の芸術、真の科学の揺籃となる基本的感情である」
と述べ、続けてこう言っています。
「そのことを知らない人、不思議な思いや驚異の念にとらわれないような人は、いわば死んだも同然であり、その眼はものを見る力を失っている、と言わねばならない」
神秘的なものを感じる一瞬の体験こそが宗教を生み、そして科学を生んできた訳ですが、掲句の「神ぞ知る」というのも、そうした意識の一瞬の開けを直截につかみとった言葉と言えるのではないでしょうか。
アインシュタインは最後にこう結んでいます。
「この意味においては、またこの意味においてのみ、私は深く宗教的人間に属する」
今週のあなたもまた、自分がどれだけのものを‟揺籃”しており、また新たに夢見ようとしているのか。自分なりに確かめていくといいでしょう。
今週のキーワード
人生で経験しうるもっとも美しいもの