みずがめ座
自分に飽きる
神さまとして
今週のみずがめ座は、「月涼し脳を出で入る健忘神(わすれがみ)」(林翔)という句というのごとし。ぼくたちは何だかすべて忘れてしまうね。
健忘症という言葉は知っていても、「健忘神」という言葉は初めて聞いたという人がほとんどではないかと思います。辞書にも載っていませんから、おそらく作者の造語なのでしょう。
涼し気な月の光と、「脳」という一字のなまなましさの対比が目立つ一句でもあります。
先の「健忘神」ということを併せれば、作者はそこで人や物の名前が出なくなってきている自分自身に対し、確かな老いを実感し、あるいはひそかな病いの進行を確認しているのかもしれません。
ただ、普通ならそこでネガティブなものが入りがちなのですが、ここではむしろそれを神さま扱いして、どこかすがすがしいもの、疲れた自分をリフレッシュさせてくれるものとして、畏れ敬いつつも、慣れ親しもうとするポジティブな心象が感じられます。
9日(火)にてんびん座で上弦の月を迎えていく今週は、自立して創造的で知的な存在であろうとするばかりが全うすべき生き方ではないのだ、という境地に改めて開かれていくことでしょう。
「自主的隷従」から脱する
人間には1つの状態が長く続き、極まると「飽きる」。
そしてまったく未知の状態へと後ろ向きに跳んでいこうとするようなところがありますが、その一方で、一時的な安寧を得るために、みずから進んで歯車になって、変化を拒んで同じ状態に留まり続けようとする傾向があるようです。
16世紀の早熟の天才思想家ラ・ボエシはそんな人間の性質を「自主的隷従」と呼びました。
そしてそれは中世に限らず、古代においても、現代においても、いつの時代も変わらずに存在し続ける人間の普遍的な性質のひとつとも言えるでしょう。
その意味であなたの今週のテーマは、小さなレベルではなくより大きなレベルで今の自分や安定した状況に「飽きる」こと、という風にも言い換えることもできるはず。
上弦の月というのは、ある種の非連続的な断絶が誘発されやすいタイミングであり、飽きるのにもってこいでしょう。
今週のキーワード
後ろ向きに跳躍する