みずがめ座
いたわりの美学
ケアの倫理と正義の倫理
今週のみずがめ座は、日本のキリシタンにおける「御大切」という言葉のごとし。あるいは、誰かの感じている痛みを自覚した上で、その誰かに手を伸ばしていこうとするような星回り。
もともとギリシャ語の「アガペー」やラテン語の「カリタス」を日本語にする時に、当時の日本人が苦労して選んだのが「御大切」という言葉でした。つまり、「大いに切なること」のことであり、抑えきれない感情や感動のこと。
「カリタス」はもともと「愛らしい、貴重である」という意味で、英語の「ケア」の語源となっています。
そしてケアの倫理を打ち立てたキャロル・ギリガンは、弱者へのいたわりにおける情緒的な関係にこそ人間関係の本質が現われ、そうした非対称性こそ人間関係において重要なのだと述べています。
こうした発想は、理性的な判断を重視し、あくまで他者とは対等であることやギブアンドテイクを大切にしようとするみずがめ座的な考え方とはおそらく異質なものと感じられるでしょう。
けれど、情念が人を突き動かす時というのは、どうしたってそうなるものですし、それは今のあなたにとっては自然なことなのではないでしょうか。
今週は、誰かの涙やも心もはらわたも震えて居ても立っても居られなくなってしまう、お節介なひとりの人間として対していくことを意識してみるといいでしょう。
勝ち負けを超えて
真の勝者とは、決して敵をただやっつけてしまう者のことではありません。
『トムとジェリー』に登場する、1つ屋根の下に暮らすネズミとネコにしても、何らかのアクシンデントで2人の追いかけっこが中断すれば先に相手に攻撃させてから再開させようとするし、相手が本気で苦しがれば救急箱を持って駆けつけ、時には休戦して一緒に出かけることさえありました。
ネコにとって獲物である以上にライバルでもあるネズミとの追いかけっこは、最上のライフワークであり「生きがい」なんです。
人間同士の関係というのはどんなに小さな差であろうと、どちらが上か下か、惚れた側か惚れられた側かの不均衡が必ず生じ、それがまた相手に惹きつけられる引力となっていくものですが、今のあなたには勝ち負けやしがらみを超えて自分の全力をぶつけていきたいと思えるような相手はいるでしょうか?
もし心当たりがあるのなら、それはもう「ケアの倫理」に基づく関係性へと近づきつつあるはずです。
今週のキーワード
カリタス