みずがめ座
生き抜くための知恵
理性の世界と宗教の世界
今週のみずがめ座は、戦後を生き抜くために宗教の世界に入っていった岡潔のごとし。あるいは、自分の中にひそむ悲しさや辛さを、積極的に見出していこうとするような星回り。
大数学者・岡潔(おかきよし)は、北海道で太平洋戦争が始まった知らせを聞いたとき、とっさにこれで日本は滅びると思ったそうです。それで、戦時中はずっと研究の中に、すなわち理性の世界の中に閉じこもって暮らした。
ところが、戦争には負けたけれど日本は滅びなかった。その代わり、最後の1人になってもお国のために戦うことを誓いあっていた日本人が、食糧を奪いあうようになり、人の心はすさみ果てた。
それを見ていられず、これ以上もう理性への逃避を続けられなくなって、死ぬに死ねず、生きるに生きられないという気持ちで救いを求めた。それが彼が宗教の世界に入った動機だった。
今週のあなたの中にもまた、彼のような「もう見ていられない」という気持ちの向かう道を歩むことになるかもしれない。
悲しみが「わかる」というところに留まって活動している限りは理性の世界ですが、人が悲しんでいるから自分も悲しくてやりきれないというのは宗教の道に通じていく。そんな風に思います。
人間は弱い、だからこそ…
近年欧米では、プロテスタントの考えるように人間を強いものではなく、弱いものと見なし、弱者の権利を助けるイスラム教の考え方に興味共感を持つ人が増えているという話を聞いたことがあります。
例えば、預言者ムハンマドの言行録『ハディース』には次のような一節が出てきます。
「力強いとは、相手を倒すことではない。それは、怒って当然というときに心を自制する力を持っていることである」
これは一見すると、強さの勧めのようにも受け取れますが、実際はそうではありません。
むしろ、人としての「弱さ」から生じてきてしまう怒りや寂しさなどの「衝動を自制する」ことの難しさを前提にしているんです。
私たちは、しばしば怒りや寂しさなどを隠したまま、無理やり笑顔を作って誰かと手を取り合おうとします。それも、人は強くあれるし、自分はそうあらねばならないという価値観の裏返しなのかもしれません。
逆に、互いの弱さを受け入れ、それを自然と自らの秘めた悲しさやつらさを誰か何かと共有することができていったとき、岡潔の言うところの宗教の道が開けてくるのではないでしょうか。
今週のキーワード
理性の限界