おとめ座
心して前進せよ
今後10年にわたる調子の礎をつくる
2023年上半期までのおとめ座が、早朝の散歩やラジオ体操をこなして体中に新鮮な空気をたっぷりと取り込んでいくような時期だったとすれば、2023年下半期は食卓で朝食をとって、これから一日を調子よく過ごしていくのに不可欠な“要(かなめ)”を得ていくような時期と言えるかもしれません。
人間は食事によって生かされることで、自然や社会、他の人々とつながっていきます。その意味で、食事はすべての始まりであり、特に朝食は仕事や運動、会話や愛情表現、趣味や心の充実など、すべての活動の礎(いしずえ)にあたります。それと同様に、おとめ座にとって2023年下半期というのは、今後10年くらいの活動の基盤をつくっていくとても重要な時期でもある訳です。
ただ、実際の日常に置き換えれば、忙しい日などはコンビニの軽食で適当にすませたり、一杯のコーヒーやサプリメントを飲んで終わりという人も少なくないでしょう。しかし、それが毎日続くとなれば、どこかで調子が狂ってしまいますし、それは運気や人生の流れにおいてもまったく同じなのです。
では、よい調子でいるためには、どんな朝食を心がけていけばいいのか。この点について、例えば料理家の土井善晴は「自分自身の心の置き場、心地よい場所に帰ってくる生活のリズムを作ること」が大切なのだと述べ、ご飯と味噌汁と漬物(ないし味噌)を1セットとした「一汁一菜」を提案しています(『一汁一菜でよいという提案』)。
ご飯を炊いて、鍋に味噌汁の素と具材を1つか2つ放り込む。これなら5分で作れますし、どんなに忙しくても捻出できないほどではないはず。さらに土井は、朝食で生活リズムをつくっていく上で重要なのは、毎日でも飽きないものであること。そして、人任せにしないことなのだと言います。
もちろん、一汁一菜が絶対という訳ではありませんし、最終的には自分の体質や好みに馴染むものを選んでいく必要があるでしょう。しかし、きちんと手入れされた庭が毎日見ていても飽きないように、「心の置き場」や「心地よい場所」は毎日きちんと胃や腸を満たしていくことで作られていくという話には、ゆるぎない普遍性があるように思われます。今期のおとめ座は、そんな暮らしの美学を身をもって確かめていくべし。
2023年下半期:おとめ座の各月の運勢
7月「マラソンランナーと監督」
7月20日に前後して、おとめ座を運行中でここぞという時の「爆発力」を担う火星が、「継続性/安定性」を司る土星に全力で身をあずけていきます(180度)。
これは、徹底的な管理のもとで記録を伸ばそうとするマラソンランナーのような配置と言えます。すなわち、走り方や身体の使い方、トレーニングメニューだけでなく、食事内容や練習以外の休日の過ごし方、目標設定まで、細やかに管理していくように、徹底的に暮らしや生き方、方向性を見直すにはもってこいのタイミングでしょう。その際、マラソンランナーにとっての「監督」のような、指導者や頼れる相談相手を見つけて、甘えたり助けてもらったりするのではなく、きちんと協力をお願いしたり、素直に受け入れていく姿勢や信頼関係を持てるかどうかが鍵になっていくでしょう。
8月「道草バンザイ」
8月10日に前後して、おとめ座の守護星で「好奇心」を司る水星が、「拡大と発展」の木星とつながって自然とゆるやかに広がっていきます(120度)。ここでは前月とは打ってかわって、あまり「役に立つか」「お金になるか」といった実利主義的な発想は捨て、むしろ「まるで役に立たないもの」や「横道にそれた先にあるもの」の方へこそ、ぐんぐん歩を進めていくことになるでしょう。
でもそうして、思いきり道草を食っていくなかでこそ、真面目にやっているだけでは超えられなかった壁を超えるための意外なヒントや発想の豊かさを培っていくことができるはず。どうせなら、心ゆくまで道草を楽しもう!
9月「結論に先にたどり着く」
9月19日に前後して、おとめ座を運行中で「目的意識」を担う太陽が、「夢見」を象徴する海王星へと前のめりで向きあっていきます(180度)。この配置は、日常的な現実よりもむしろ夢やスピリチュアルなものの方をよりリアルに感じて、そこに思いきり飛び込んでいこうとするような形で表れます。そのため、場合によっては現実社会ではまったく「使えない」状態になってしまうこともありますが、その分、「夢で訪れた場所には何か意味がある」とか「縄文時代の暮らしの方が自分に合っているのでは」といった、ぶっ飛んだ発想を真面目に追求していくことができるはず。
現実的なだけでは決してたどり着くことのできないような結論に、プロセスや説明をすっ飛ばして一足飛びにたどり着いたりもするので、この時期は直感を頼りに非日常的な場所に身を置いてみるといいかも知れません。
10月「用の美を取り入れる」
10月10日に前後して、おとめ座を運行中の「美意識」の金星が、「実用性」を司る土星に全力で身をあずけていきます(180度)。この配置は、言わば、セルフイメージないし目標像として「五重塔」のような美しい建築物を取り入れていくようなものでしょう。シルエットの美しさもそうですが、五重塔は地震によって倒壊した事例が無く、構造物としての性能も非常に優れているのが何よりの特徴です。
その意味で、服装やインテリアに限らず、人間関係においても、病弱で歪んだデザインではなく、機能性と美意識とが自然と溶け合った「用の美」にかなうものになるよう、意識してみるといいでしょう。
11月「解像度をあげていく」
11月3~4日に前後して、おとめ座を運行中で「感性」を担う金星が、今度は「融解/溶解」の星である海王星をターゲットにしていきます(180度)。この組み合わせは、しばしば俗世からの逃避行的なニュアンスを帯びるのですが、ここではむしろふだんの日常で無意識的に働いている防御機制をオフにしていくような形で作用していきそうです。
例えばこれは、実験音楽家ジョン・ケージの「4分33秒」の生演奏を聴きに行った後に体験することに近いかも知れません。この有名な三楽章からなる曲では、ピアニストは何も演奏しません。代わりに、誰かがせき込む音や、椅子がきしむ音、妙な間で起きる笑い声など、会場で起きるすべての音が1つの曲を作ります。そして、ホールを出て帰路につこうと、地下鉄に乗ろうと駅に足を踏み入れると、そこに響き渡るあらゆる音が新鮮に感じられるはず。人の足音、風の音、構内アナウンス、電車がやってくる音。厳密に言えば、そういう音が以前よりはっきり聞こえるというよりも、それまでまったく聴いていなかったことに気付くのです。言わば、ここでは普段耳につめていた耳栓が取れていく訳ですね。
12月「お守りとなる言葉を与えあう」
12月8日に前後して、おとめ座の守護星で「言語化」を担う水星と、「自己肯定感」の木星とが共振・増幅しあっていきます(120度)。木星は集団的なムーブメントを伴いやすいですから、ここでは自分ひとりで悶々と考え込むのとは真逆に向かって、周囲の思いに呼応するようにみずからも声をあげたり、みながうすうす感づき始めていたことを明確な言葉にすることで、改めて気付かせていくような形で現れていきやすいでしょう。
誠実で真摯な雄弁か、ハーメルンの笛吹きか。後者にならないためにも、この時期はできるだけネガティブな感情や乱暴な言葉が飛び交う環境からは距離をおいて、信頼できる穏やかな相手と交流するよう心がけたいところ。うまく転がれば、お守りとなるような言葉を交わしあえて、自己肯定感もグッと高まっていくはず。
2023年下半期:おとめ座の「おすすめの文豪」
内田百閒
内田百閒という人は、なんだか不思議な作家で、本格的な長編小説はなく、幾つかの短編小説のほかは、借金のことや食べたもの、他の身辺のこと、付き合った人びとのことなどをつづった膨大な随筆を残しただけ。けれど、なんだか不思議な存在感があって、何かの拍子に不意に思い出しては、あの口がへの字に曲がった独特の顔を思い浮かべてしまって、この人の書いた変な話を読みたくなるのです。
例えば、師である夏目漱石の『夢十夜』や百物語にも通じる雰囲気のある『冥途・旅順入城式』は、ショートショートのようなものまで含めた短編小説集。『遣唐使』という作品では「私は遣唐使になって支那に来た。一緒について来た君はどうなったか判らない」という書き出しから始まって、まるで夢のような展開をしていきながらも、最後は辻褄が合わないまま終わってしまう。
また、『件』という作品では、「私」が件(くだん)という身体が牛で頭が人間の怪物に変身しています。この怪物は、生まれて3日にして死に、そのあいだに人間の言葉で未来の凶福を予言するとされる伝説があるのですが、作品ではなぜかその件になった「私」を群衆が取り囲んでおり、いつ予言するかを固唾を飲んでじりじりと見守っています。ところが、「私」は予言するのがなんとなく嫌で、さらにそれを強要される展開になってもっと嫌になるのですが、最後は夕暮れが近づいて月がぼんやりあたりを照らしはじめたところで、「何だか死にそうもない様な気がして来た」と呟くところで終わっています。
このどこか人を食ったような、奇妙な気分にさせられる読後感は、紀行文でもまったく変わらず、例えば『第一阿房列車』の中では、「用事がないのに出かける」旅の電車賃の工面について、次のように綴られています。
一番いけないのは、必要なお金を借りようとする事である。借りられなければ困るし、貸さなければ腹が立つ。又同じいる金でも、その必要になった原因に色色あって、道楽の挙句だとか、好きな女に入れ揚げた穴埋めなどと云うのは性質のいい方で、地道な生活の結果脚が出て家賃が溜まり、米屋に払えないと云うのは最もいけない。
では、どんな借金ならいいのか。百閒先生いわく、借金の本筋は「旅費に限る」。なぜなら、「こちらが思いつめていないから、先方も気がらく」だから。確かに、思いつめて借金することほどつまらないものはない。どうせなら愉しいことを思い描いて、それを人に説明してから「有難く拝借」しようではないか、と。こんなところなども、「暮らしの美学」がテーマとなる今期のおとめ座にはもってこいという気がします。
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