やぎ座
世界が以前とは違う輝きを帯びてくるまで
手の届く範囲で小さな革命を
2023年上半期のやぎ座が、みずから出すぎた杭的「カリスマ」となるよりも、周囲の埋もれた杭を引き出したり、自身も引き出してもらったりしていく「長老」へとロールモデルが変わっていくような時期だったとすれば、2023年下半期のやぎ座は、自身で体験しうる範囲内の小さな輪をどれだけ広げていけるか、そしてそれによってどんな風に自分は世界を変えていきたいのかを明確にしていくことがテーマとなっていくでしょう。
ここで思い出されるのは、2000年代後半にアメリカの西海岸で次々と現われ、日本でも少しずつ数を増やすようになったサードウェーブ系と呼ばれるコーヒー屋さんたちのことです。その特徴は、大企業ではなく個人が始めた小規模な形態であること、コーヒー農家と直接取引やフェアトレードによって公正な価格で高品質な豆を仕入れていること、店内で焙煎した豆を注文を受けてからハンドドリップで丁寧に淹れていること、などが挙げられますが、何と言っても象徴的なのは、彼らが掲げている「大手コーヒーチェーンのようにはならない」というメッセージ。
すなわち、大量生産・大量消費の資本主義社会の波にのって、生産者が不当に割を食うような仕組みを拡大させ続けていくようなビジネスではなく、たとえ小規模ながらも自分たちは農家も店も疲弊させず、持続的に存在し続けられるような無理のない形態で、丁寧にコーヒーの一杯をつくり提供していこうという決意の現われなんですね。そして、それはちょうど今期のやぎ座が目指すべき姿とも重なっていくはず。
もちろん、都心のビジネスマンから若い学生、田舎の主婦まで幅広い層になんとなくスタイリッシュな時間や、ファッション感覚のドリンク体験を提供しているコーヒーチェーンのような存在は、社会の多くの人々にとってもはや無くてはならないものになっています。
しかし、そんな多数派の世界からこぼれ落ち、割を食っていたり、疲弊してしまっている少数の人たちの存在の方が、今のやぎ座の目にはより鮮明に映っているのではないでしょうか。もしそうであるなら、まずは自分の手が届く範囲内で、この世界に「小さな革命」を起こしていくべし。
2023年下半期:やぎ座の各月の運勢
7月「『英国王のスピーチ』にならおう」
7月20~21日にかけて、やぎ座の守護星で「責任」を象徴する土星が、「外部への行動」を司る火星をターゲット化していきます(180度)。この配置は、映画『英国王のスピーチ』をイメージしてみるといいでしょう。あらすじとして、もともと吃音症でスピーチに苦手意識をもっていたジョージ王子が、ひょんなことから王位を継承することになり、一度は仲違いしていた言語療法士のもとで特訓して国民を元気づけるスピーチに大成功する、というもの。
ジョージ王子の場合は、戦時において不安と混乱のさなかにあった国民を励ますという課題がありましたが、この時期のあなたも、自分が必死に応えなければならない課題と責任ということを、おのずと強く意識していくことになりそうです。
8月「洗練への道」
8月2日頃には、「構造化」を促す土星が、今度は「知識や情報」の水星をターゲット化していきます(180度)。水星というのは本来気まぐれなところがあり、知識や情報を得ると言っても、虫食い葉っぱのように抜けや漏れがほどほどにあるものなのですが、この時期はそうした「抜けや漏れ」に対する徹底的な見直しがはかられたり、ベースとなる考え方や背景知識をきちんと掘り下げることで、偏りのある知識をきちんと体系だて、均質化していこうとする機運が高まりやすいはず。
あるいは、そのきっかけとなるような出会いや指摘、ツッコミを受けることになるかも知れません。しかし、それもあなたの知性をさらに洗練されたものにしていくために不可欠なプロセスだと思って甘受していくべし。
9月「ゴミ屋敷の大掃除」
9月25日に前後して、「苦手意識の向かう先」を表す土星が、「未来をつくる」太陽の影響を取り込もうと意識的に努力して調教&改造していくような配置をとります(150度)。
この時期は、うお座土星的な「〇〇したら嫌われるのでは」「裏切られるのでは」といった後ろ向きな自己防衛本能に対して、きちんと戦略に基づいて理性的に攻勢を展開していきたいてんびん座太陽が介入していくという構図。したがって、これまでなら悪い意味で情に流されて処理できなかった問題や関係性に対して、公平性を保ちつつ適切なツッコミを入れていくことになりそうです。それは傍から見れば苦痛を伴う体験かも知れませんが、ゴミ屋敷化していた部屋の大掃除のごとく、終わってみれば爽快感もわいてくるはず。
10月「灰色の美学」
10月10日頃には、「熟成」を促す土星と「美意識」を司る金星とが、互いを鏡にして働きかけあっていきます(180度)。この時期は、喩えるなら江戸時代に「いき」な色として貴ばれた灰色の美ということを考えてみるのもいいでしょう。深川鼠、銀鼠(ぎんねず)、藍鼠、漆鼠などさまざまなニュアンスにおいて名称化された灰色は、白から黒に推移する色の淡さそのものを表す光景として、また「諦め」を色彩化したものとして重視されたのです。
九鬼周造は「いきは過去を擁して未来を生きて」いるもので、「色っぽい肯定のうちに黒ずんだ否定をかくしている」のだと述べましたが、この時期のあなたもまたこうした灰色の美学を自身の着こなしやブランディングに改めて取り入れてみるといいでしょう。
11月「ターボをかける」
11月23~25日にかけて、やぎ座の守護星で「ブレーキ」を促す土星に、「前進」の太陽と「アクセル」の火星が連続的に強力な揺さぶりをかけていきます(90度)。これは喩えるなら、年長者や師の制止をふりきって、新たな試みを開始するべく1歩も2歩も踏み出していく教え子のようなイメージ。したがって、この時期はマフラーから炎を出してターボをかける車のように、普通以上のスピード感で物事が一気に進展していきやすいでしょう。
逆に見れば、この時期までにどれだけ綿密な計画立案や、慎重を期したプランの見直し、ダブルチェックをかけていけるかがここでの成否を握っているのだとも言えます。
12月「実りある継承を実現させるために」
12月24日頃には、やぎ座を運行中で「創造性」を司る太陽に、「古き伝統や慣習」を司る土星が阿吽の呼吸で力を合わせて協働していきます(60度)。「温故知新」を地で行くようなこの時期は、どれだけ既存の枠組みやリソースをうまく活用しつつ、持続していく未来を思い描けるかということがテーマとなっていくでしょう。
文化のバトンというのは、未来ある若手や新勢力だけによって受け継がれていく訳ではなく、必ず過去の蓄積を担い、歴史を継いできたその道のベテランや古株の支援や助力があって初めて未来に残っていくものです。その意味で、ここでは世代間の対話や継承をスムーズなものにしていくために、自分には何ができるかが問われていくのだとも言えます。
2023年下半期:やぎ座の「おすすめの文豪」
フランツ・カフカ
20世紀を代表する作家の中でも、そのユニークさと唯一無二の個性で他の追随を許さない存在であるカフカは、若い青年グレゴール・ザムザがある朝目を覚ますと巨大な毒虫に変身していたという不条理小説『変身』などでつとに知られています。
しかし、この不条理でシュールではあるけれど、いまいち何が言いたいのか分からない寓話調の話を、カフカは「コメディ」として書き、友人に朗読しては爆笑を誘っていたのだとか。
例えば、「グレゴールは力いっぱいにベッドから跳び下りた。どすんと大きな音がしたが、それほどひどい物音ではなかった。絨毯がしいてあるため、墜落の力は少しは弱められたし、背中もグレゴールが考えていたよりは弾力があった。そこでそう際立って大きな鈍い物音はしなかった。ただ、頭は十分用心してしっかりともたげていなかったので打ちつけてしまった。彼は怒りと痛みとのあまり頭を廻して、絨毯にこすった」なんて箇所は、普通の生活をしていくだけの運動神経さえも欠落していたカフカ本人をそのまま描写したかのようです。おそらく、絶望的状況にある主人公=カフカを笑ってもらうことによって、作品は完成するのだと考えていたのではないでしょうか。
思い返してみれば、カフカの残した小説や断片はどれも不思議な面白さがありますが、それ自体で完成した作品と言えるかどうかは不明です(彼は死ぬ前に自分の書いたものをすべて焼却処分するよう書き残した)。
それは傑作の一つとされる『流刑地にて』(岩波文庫『カフカ短篇集』収録)にしても同じでしょう。この話には、ある流刑地で前司令官が開発したという、囚人の体に判決文を彫りこみながら殺していくというグロテスクな処刑機械が登場します。そして、その機械への学術調査において、異様なほど饒舌に説明していた将校が、やがて妙な行きがかりから処刑機械にかかって自分を殺してしまうという結末を迎えるのですが、これもある種の諷刺的作品であり、具体的な文脈をセットすることで初めて芸術作品として完成する、というものだったのではないでしょうか。
例えばカフカはこの作品によって、他人の精神を支配するべく“悔い改め”を目的とするキリスト教を嘲笑しようとしていたのだとも考えられますし、その対象は官僚機構や裁判制度、また昨今であれば、SNSでの暴露や炎上騒ぎなどにも適用できるかも知れません。
その意味で、自分のできる範囲内で、どんな風に自分は世界を変えていきたいのかを明確にしていくことがテーマの今期のやぎ座にとって、こうしたカフカの作品づくりは、自身の活動のベンチマーク対象にもしていけるように思います。
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